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熱力学・統計力学
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熱力学・統計力学は, 剛体力学のように1対1の物体間の力学でなく,
多数存在する粒子の大域的な振る舞いを取り扱う物理学です。
そのため, その物理現象を想像しにくいので苦手意識をもつ人が多いのが事実です。
私もその一人でしたが, しっかりと勉強してみると, なかなか
面白いと思えるようになってきました。
第1章: 温度と熱
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熱は物体に与えるエネルギーであり, 温度は物体が内部に
取り込んでいるエネルギーを表す尺度です。
本章では, 熱力学の基本を説明します。
- 熱量は系に与えるエネルギー量である。
- 温度には, それよりも下げることができない限界 (絶対零度) が存在する。
- 理想気体は, 温度・体積・圧力の間に状態方程式が成立する。
- 状態量は加熱などの状態変化とは無関係に決まる量である。
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第2章: 熱力学の法則
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熱力学の二大法則は, エネルギー保存則に対応する第1法則と,
エントロピー増大の法則に対応する第2法則です。第2法則が
熱力学を難しく感じさせる要因ですが, 自然現象として当然の性質を
表しているにすぎません。
- 熱力学第1法則はエネルギー保存則である。
- 熱力学第2法則は熱が冷める現象は不可逆であることを主張する。
つまり, 冷めた熱は無条件では元に戻らない。
- エントロピーは熱力学第2法則を数学表現するために導入された
状態量である。閉じた系で, エントロピーは減少しない。
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第3章: 気体分子
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気体分子が衝突する際のエネルギーや運動量の保存則を用い,
ある状態における気体分子の期待値を定式化していきます。
- 気体の圧力は, 気体分子が壁に衝突した際の力積で決まる。
- 気体分子の運動方向, 回転方向など, 運動がとる自由度に対し,
熱エネルギーは均等に分配される。
- 実際の気体には分子間力が作用するため, 理想気体とのずれが生じる。
- 気体の運動速度は特定値でなく, 特定の確率分にしたがい分散している。
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第4章: 熱雑音
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電気回路には, 導体の構成分子の熱運動によって雑音が発生します。
その雑音の電力は, 絶対温度と電気回路の周波数帯域幅の積に比例します。
本節では, 熱運動による影響を定式化し, 雑音電力を見積もります。
- 構成分子の熱運動によって, 自由電子が乱数的に導体内を運動するのが
雑音の正体である。
- 雑音の発生は, 導体に乱数的な起電力が発生することに起因すると考える。
- 電気抵抗は, 自由電子が導体の構成原子との衝突で受ける抵抗力に起因する。
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第5章: ボルツマン分布
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ここから統計力学に入ります。
確率論的な考察によって, 気体分子がとるエネルギーの確率密度を
特定します。本章の議論によって, エントロピーが乱雑さの
尺度であることがわかります。
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第6章: 黒体放射
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物体は電磁放射の形で熱を放射します。十分な高温状態では, 放射される電磁波の
周波数が高くなり, 可視光の領域に入ります。その結果, 物体が光を発するように
見えます。電磁波を放射することによって, エネルギーを失い,
物体は冷えるわけです。つまり, 熱放射は電磁現象ということです。
- 単位時間当たりの熱放射は絶対温度の4乗に比例する。
- 黒体放射の放射分布は, 低周波ではレイリー・ジーンズの法則に,
高周波ではウィーンの法則に近い。
- プランクの内挿公式によって, すべての周波数において
放射分布と実験値が一致する。プランクの内挿公式は,
電磁放射が粒子の単位で構成されることを示唆している。
つまり, 黒体放射は量子力学へのきっかけである。
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付録
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