さくら | 今日、観月先生からお手紙が来たよ! |
知世 | まあ、さくらちゃん、観月先生と文通なさってるんですね。 |
さくら | うん、時々相談にのってもらったり、イギリスで起きた面白いこととか 教えてくれたりしてもらってるの。 |
知世 | 今日の手紙には何か面白いことはありましたか? |
さくら | んっと... そうだ。 先生は、ロンドンで大学生活をエンジョイしてて、 金髪で青い目のカッコいい男の子ともお友達になれたんだって。 |
エリオル | なんですって?! |
さくら | わぁ! エリオルくん、どうかしたの? |
エリオル | コホン... な、なんでもありませんよ。その、観月先生というのは? |
知世 | 柊沢くんが転校してくる前に担任の先生をなさっていた方ですわ。 |
さくら | うん。 ステキな先生だったんだよ。 優しくて、美人で... |
山崎 | そして色っぽい人だよ! 李くんもそう思うよね? |
小狼 | お、俺は、その... |
さくら | そういえば、小狼くんって、ずっと先生のことを怪しそうに見てたよね。 |
山崎 | その気持ちわかるなあ。 先生は確かに不思議な雰囲気がしてたよね。 オトナの女性... ステキな響きだよね。 |
小狼 | 山崎、なに言ってんだ? 俺は... |
山崎 | なにも言わなくていいよ、李くん。 どうせ、ぼくと同じこと考えてるんでしょ。 観月先生がハイヒールで顔を踏んでくれたら、もう最高だよね。 |
さくら | あの、小狼くんも同じこと考えてるの? |
小狼 | ちが... 俺は... |
山崎 | ほら、李くん、自分にもっと正直ならなきゃ。 ぼくみたいに。 |
千春 | こらぁ、山崎くん、なにバカなことばかり言ってんのよ?! |
山崎 | あ、別にウソはついてないよ。 僕はただ、自分の気持ちに正直に。 |
千春 | このバカ、こっち来なさい! もう許さないんだから! [山崎を引きずっていく] |
さくら | ほえええ... |
知世 | またグルグル巻きにして路上に放置されちゃうんでしょうか? |
小狼 | お、俺はそんなこと考えてなかったからな。 |
エリオル | くっくっく。 わたしは、ずっとそんなこと考えてましたけどね。 |
園美は、後ろに数名のボディーガイドをしたがえて、藤隆を連れて部屋に 入る。 その暗い部屋の奥には老婆が座っており、 その前には水晶玉が 置かれている。 | |
藤隆 | この方が園美くんの言っていた霊媒師の先生ですか? |
園美 | そうよ、木之本先生。 久保愛子先生といって、齢90歳を過ぎているけど、 普通の人が霊界と交信できるように魂を中継してくださるわ。80年以上の経験を裏に、すごい力をもっているの。 |
藤隆 | へえ、あの顔に深く刻まれた年輪の影にね... |
園美 | ちょっと、木之本先生。 今日は撫子と話すために来たんでしょ? |
藤隆 | そうでしたね... 先生、お願いします。 私は8年前に死んだ妻の撫子さんと話をしたいのです。 |
霊媒師 | わかっておる。 そなたの望みはお見通しじゃ。 なにも言わずともよい。 すべて任せるんじゃ。 ぐぐぐ... あぶらかだぶら あぶらそば つけめん つけだれ なまむぎなまごめみそらーめん |
園美 | ヘンな呪文... |
霊媒師は 2 〜 3 秒ほど、表情がなくなり、その後、まばたきをしながら あたりを見回す。 | |
霊媒師 | あら! ここはどこ? あっ! 木之本先生! |
藤隆 | すごい! 撫子さんが久保先生に乗り移った! |
園美 | なぜわかるの? |
藤隆 | 普通、自分の旦那を木之本先生なんて呼ばないでしょ? でも、撫子さんは僕のことをそう呼んでたんですよ。 |
園美 | 確かに。 |
藤隆 | 撫子さん、また会えるなんて、嬉しいですよ。 |
霊媒師 | 私も嬉しい。 木之本先生。 |
藤隆 | 空の上の、天国ってどんな感じですか? |
霊媒師 | とってもステキなところ。 先生も早く来れば... あ、ごめんなさい。 でもきれいなところよ。 それに、わたし、時々お家に戻ってきてるし。 日に日に、桃矢くんもさくらちゃんも大きくなって、楽しみだわ。 |
藤隆 | ええ、撫子さんに時々会ってるって、桃矢くんも言ってましたよ。 |
霊媒師 | でも、今までの中で、今が一番幸せ。 わたし、まだ先生のことが大好きです。 先生は? |
藤隆 | 僕もですよ。 広い海のどの部分よりも深く、撫子さんのことを愛してます。 絶対に。 |
霊媒師 | 木之本先生、ホント? 証明してください。 |
藤隆 | え? |
霊媒師 | 私を抱きしめて、やさしくキスしてください。 [藤隆の顔を見つめる。 深くしわが刻み込まれた顔で。] |
藤隆 | うっ! えっと... その... またの機会ということに。 ほら... 園美くんたちも見ていることだし... ね? |
知世 | 来月、母の会社が中国に進出することになりましたの。 |
さくら | ほえー、すごいね。 中国のどこに進出するの? |
知世 | 香港ですわ。 |
小狼 | 本当か、大道寺? |
知世 | 本当ですわ。それで、母の話では、現地での社名は 「大道寺公司」に なるそうですわ。 |
小狼 | 「ダイドウジ・グンスィ」か。 |
さくら | なにそれ? |
小狼 | 香港ではそういう発音になる。 |
さくら | そう言えば、中国語って同じような発音なのに違う意味の 言葉がいっぱいあるって聞いたことあるよ。 |
小狼 | どういう意味だ? |
知世 | それは、抑揚の違いで意味が変わるってことですね。 |
小狼 | 抑揚か... 確かに日本人には難しいだろうな。 普段から使ってると気にならないけど。 |
さくら | そんなものなの? |
小狼 | 俺の名前だって、ホントの発音どおりに書くと Xiaolang になるんだ。 |
知世 | Syaoran って綴りは日本製ですね。 |
さくら | え〜っ! そんな、いろんな発音に、いろんな綴り方が あってわかんないよぉ! あたし、香港で生活することになったらど〜しよ〜?! |
知世 | あらまあ。 もう さくらちゃんは、すっかりその気になって ますわよ。 李くん、さくらちゃんをよろしくお願いしますわね。 |
小狼 | だ... お、俺は... その... 別に... |
さくら | この中国語の文字って、漢字を簡単にしたみたいな 字なんだね。 |
小狼 | それは簡体字って言うんだ。 |
さくら | かんたいじ? |
山崎 | 簡体字はね、中国のお偉いさんが考えた簡単にした漢字の ことなんだ。 |
小狼 | よく知ってるな。 山崎。 |
山崎 | どうして簡単にしたかと言うと、昔の漢字は画数が多くて 書きにくかったんだよ。 何百画もあって、違う人が書くと 同じ字なのに まったく違う形に見えたりしたらしいんだ。 だから、当時は... |
千春 | そんな不確かな字で情報伝達できるわけないでしょ! |
山崎を引きずっていく | |
知世 | あら、でも香港では簡略化していない繁体字って漢字を 使うんですわよね。 |
さくら | そうなの? |
小狼 | ああ。 それに、日本の漢字と香港の漢字はずいぶん違うんだ。 おまえの名前の「桜」なんて、日本でしか使わないんだぞ。 |
さくら | 香港ではどう書くの? |
小狼は 「櫻」 と書いてさくらに見せる。 | |
さくら | はうう、あたし香港で暮らすようになったら自分の名前 書けないよ〜 |
知世 | 香港で暮らすって... ほら、さくらちゃんは、もうその気になってますわよ。 ね、李くん? |
小狼 | だから... お、俺は... 別に... |
歌帆 | あら? 木之本さんでしょ? |
さくら | あ、観月先生! |
歌帆 | 久しぶりね。 大人っぽくなったわね。 見違えちゃったわ。 |
さくら | そんな... でも、こんなところで会うなんて。 |
エリオル | ちょっと日本に遊びに来たんですよ。 |
さくら | ということは、秋月さんとスピネルさんも? |
エリオル | ええ、来てますよ。 日本にいる間は、月峰神社でお世話になっているんです。 |
さくら | そうなんだ。 でも、イギリスから来るって、お金がかかるよね? そのお金とか どうしてるの? |
エリオル | さすが、さくらさん。 気になりますか? |
歌帆 | エリオル... |
さくら | あ... 立ち入ったことだったら別に答えなくても... |
エリオル | その気になれば、 僕は こういうこともできるんですよ。 |
さくら | 木の葉? |
エリオル | 3... 2... 1... ほら。 |
さくら | ほえ! お金になっちゃった。 でも、これって悪いことじゃ... |
エリオル | でも、今みたいに不景気な時こそ、 こうやってお金まわりをよくした方が景気がよくなるんですよ。 |
さくら | そうなんだ... |
その後、さくらと別れたエリオルたちは 月峰神社で、 奈久留とスッピーと落ち合う。 | |
歌帆 | ねえ、エリオル。 ホントに、ニセ札とか使ったりしてないでしょうね? |
エリオル | 当たり前だ。 さくらさんを納得させるための口実だ。 まさか、歌帆から (少しだけ) 工面してもらってるなんて言えないだろ。 |
歌帆 | ホントにニセ札 使ってたら、わたしは教師として、 あなたを見逃すことはできないわね。 |
スッピー | 観月さんもエリオルも、自分以外のモラルには厳しいですからね。 |
歌帆 | どういう意味? |
奈久留 | あはっ!
でも、木の葉をドロンとお金に変えるんだって? そういうのは、どっちかというと、スッピーの方が向いてるんじゃないの? |
スッピー | なんですって?! |
編集者注 使用する目的で貨幣を偽造、もしくは、変造した場合、 刑法 148 条により、無期または3年以上の懲役に処せられます。
さくら | やった! もうすぐひな祭り! |
桃矢 | ん、またあの人形飾るのか? |
さくら | 当たり前でしょ。 そのためのお雛様だもん。 すごく きれいなんだもん。 |
桃矢 | バタバタと大変だぞ。 どうせひな祭りがすんだら、 すぐ片付けるんだろ。 どうせなら、ずっと飾った ままにしてればいいのに。 そうしたら、毎年、 出したりしまったりしなくてもよくなるんだから。 |
さくら | そんなのダメだよ。 お雛様をしまうのが遅くなると、 お嫁に行くのが遅れちゃうって言ってたよ。 |
桃矢 | だからだよ... |
さくら | ほえ? |
桃矢 | いや... そんなのは迷信だ。 雛人形ってきれいだからさ、 ずっと見ていたいんだ。 永遠に。 |
さくら | ほえ? |
さくら | あのね、最近ずっと思ってたんだけど、 自分で魔法のカード 創りたいなって。 |
知世 | あら、さくらちゃんならきっとできますわ。 李君が香港にお帰りになられた日、新しいカードを創ったじゃありませんか。 |
さくら | そうだけど、どうやって創ったかわからないの。 |
知世 | そんな 簡単なことじゃないんですね... で、さくらちゃんは、どんなカードをお創りになりたいのかしら? |
さくら | えっとね... 人の能力とかを他の人に移すことができるカードとか。 例えば、あたしが知世ちゃんに魔力を移して、すると、 知世ちゃんは魔法を使えるようになるの。 |
知世 | 輸 (トランスポート) のカードですね。 超パーペキなナイスアイデアですわ。 わたしも魔法が使えるなんて待ち遠しいですわ。 |
さくら | そうしたら... 不思議な事件が起こったとき、あたしが病気で 寝込んでいたら、知世ちゃんが代わりに活躍してね。 知世ちゃんのバトルコスチュームで。 |
知世 | そ、そんな! あんなフリフリのコスチュームで人前に出るなんて、 そんな恥ずかしいマネ、私にはできませんわ! |
さくら | と、知世ちゃん... 今、すごくヒドいこと言わなかった...? |
知世 | おほほほほ... なんのことでしょう? |
さくらは、緊張した表情であたりを見まわす。 | |
ケロ | どないしたんや、さくら? |
さくら | あのね、ここ数日間、ヘンな気配がするの... まるで、誰かに見られているような。 |
ケロ | そいつは穏やかやないな。 |
さくら | 笑い事じゃないよ。 ホントに気味が悪い。 |
知世 | さくらちゃんは超絶かわいいですから、ストーカーの 一人や二人いても不思議ではありませんが... ヘンですわね。 |
さくら | ヘン? |
知世 | ここ数日、ずっとさくらちゃんのことをビデオ撮影しておりましたが、 怪しい人は別に映っておりませんでしたわ。 |
さくら | そうなんだ。 やっぱり思い過ごしなのかなぁ? |
ケロ | なにアホなことゆーとるねん。 ここで、重要なことに 気づかなあかんやろ。 そのストーカーの正体、わいには わかったで。 |
さくら | ほえ? |
園美 | なによ、木之本先生。 私を電話で呼び出すなんていい度胸ね。 で、どうかしたの? |
藤隆 | 実は、その、もう一度 撫子さんと話をしたくなったんです。 ちょっと切ないくらいに。 |
園美 | ふぅ... わかったわ。 また久保先生(1) のところに連れて行ってあげればいいのね。 |
藤隆 | え? この前 行った、あの年老いた霊媒師のところに? それは勘弁して! この前はとんでもない罠にハメられましたからね。 |
園美 | じゃあどうすんの? |
藤隆 | ねえ、園美くん。 どこかにいないものかなぁ... 二十歳くらいで... 深田恭子に似た美人霊媒師が... |
園美 | って、木之本先生! ホントに撫子に会いたいと思ってんの?! |
(1) 12. 霊媒師 を参照。
このショーティは第68話のパロディです。 | |
さくらは友枝町で起こる不思議な事件が、クロウ・リードに関係している かもしれないと思い、そのことをクロウ本人に尋ねるため、 リターンのカードを使ってクロウが生きていた時代に やって来た。 気がつくと、さくらは庭に立っていた。 ユエとケロが つぼみの 付いていない大きな桜の木を見て話している。 | |
さくら | あれ、ケロちゃんにユエさん... |
ユエ | ☆△$×, ケルベロス? (← さくらには こう聞こえる。 文字化けではありません。) |
ケルベロス | □○☆, ユエ。 %$☆℃△☆×○, ÷□☆△. |
ユエ | ☆○☆。 |
そこに クロウ・リードがやってくる。 | |
クロウ | フラワー, $☆△÷□。 |
クロウがフラワーのカードを使うと 桜は瞬く間に 満開となり、 桜吹雪を散らす。 | |
クロウ | ○☆☆, $☆○ビューティフル チェリブロッサム □☆%$☆℃△☆, ケルベロス&ユエ。 |
ケルベロス | %$×○☆℃△, クロウ! %$☆☆%□×℃○$÷△☆。 |
さくら | ほええ、みんな なんて言ってるかわかんないよ〜! |
いくら日本に住んでいると言っても、海外出身者同士が日本語で 会話するというのはヘンですよね。 多分、自分たちの国の言葉を 使ってたと思います。 ということで、ここでは 英語を使っていたと仮定しています。 (広東語だったという説もあるか...) | |
このまま圧倒されているだけでは過去に来た意味がない、ということで、 さくらは気を取り直して クロウリードに話しかけてみる。 | |
さくら | クロウさん... あ、あたし... |
クロウ | オーゥ、ソチハ アタラシィ クロウカード ノ ミストレス ナル ネェ ワカリマスル ナニカ モンダイ アリテ フューチャー ヨリ キタリシ... イズ ザット ライト? |
さくら | ほ、ほえええ! 日本語があやしぃ〜よぉ! (しかも 時代劇っぽい) |
クロウ・リードはまだ 日本に来たばかり... ^^;
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