エリオル | おい、ルビー・ムーン。 その格好はどうしたんだ? |
奈久留 | うふふ、また洋服買っちゃった。 |
エリオル | ふ〜ん、洋服に金をつぎ込んでるようだが... でも、その服は似合ってて、なかなかかわいいじゃないか。 |
奈久留 | うぅぅぅ... |
エリオル | ルビー・ムーン、どうかしたのか? 気に障ることでも言ったか? |
奈久留 | 服が似合うって言ってくれたのは嬉しいんだけど、その後の言葉... |
エリオル | かわいいと言っただけだが。 |
奈久留 | かわいいってことが、守護者としての能力となにか関係があるの? これってセクハラだ〜! |
スッピー | また、外でヘンなことを覚えてきましたね。 |
エリオル | そんなこと言っても、おまえは女じゃないし、 いつも自分でかわいいって言ってるじゃないか。 |
奈久留 | 自分で言うからいいんだも〜ん! |
スッピー | ホントに自分勝手ですね、あなたって人は。 |
エリオル | 守護者にセクハラしたってしょうがないじゃないか。 |
奈久留 | だって、さっきエリオルの眼鏡がキラリと光ったから怖かったんだもん。 なにかたくらんでるみたいで。 |
奈久留 | エリオル、見たわよ。 今日、うちのガッコで女の子に大人気だったじゃない。 |
エリオル | 見てたのか。 この前、星條高校で女の子の占いをしてやったんだが、 その子が、私の占いがよく当たるって噂をばらまいたらしいんだ。 それで、今日は手相を見るので大忙しだったよ。 |
スッピー | あれ? エリオルの占いでは、手相など見なかったはずでは? |
エリオル | ちょっとしたお題目さ。 せっかくの女子高生だ。 手ぐらい触ってもいいだろ。 本当は、 おっ⃝い占いにしたかったところだ。 |
歌帆 | とうとう, カードも全部変わっちゃったわね。 でも, 私が集めてれば, 私が主になれたかもね。 |
エリオル | でも, 歌帆がもつのは月の力だろ。 |
歌帆 | メイズのカードも手応えなかったし, カード集めるうちに, 太陽の力が身に付くかもしれないわ。何となく, できてたような気がするの。 |
エリオル | 何となくか... それなら, できてたんだろうな。 でも, 最後の審判はどうだ? |
歌帆 | 守護獣のカードを使えばいいんだから, アーシーで拘束して, ファイアリで石焼きユエ にすればいいんでしょ。 |
エリオル | ご名答だ。しかし, 見かけによらず, 残酷だな。 仮の姿 月城雪兎 に会っているクセに。 |
歌帆 | いくらボロボロにしても, 審判が終わると元に戻るんでしょ? |
エリオル | 気づいてたか。で, もし歌帆が主になっていたら, どうする? |
歌帆 | そうねぇ, やっぱり, 世界征服かしら... |
エリオル | さくらさんが主でよかったよ... |
奈久留 | エリオル、見たわよ! 今日もうちのガッコで女の子に大人気 だったじゃない! |
エリオル | ルビー・ムーン、また見てたのか。 |
スッピー | エリオル、また おっ⃝い占いしに行ってたんですか? |
エリオル | なんだ、スピネル、その言い方は。失敬だぞ! |
スッピー | 違うんですか? |
エリオル | たまたま、星條高校の中を歩いてたら、誰かがわたしを指さして ハリー・ポッターに似てるって言ったんだ。すると、たちまち 女の子に囲まれたってわけだ。 ... で、これが戦利品だ。 |
奈久留 | やったー、チョコレートがいっぱい! スッピーも食べよ! |
スッピー | 結構です! |
奈久留 | ♪チョコレートはあんまり食べると 気持ち悪くなっちゃう〜ン! |
スッピー | 歌はいいから、早く目の前から片づけてください。 |
奈久留 | おいしいのにね。でも、超ラッキー! エリオルさまさまね! |
エリオル | そうか、わたしは あんなガキの二流魔法使いと一緒にされて 不愉快だがな。 |
奈久留 | エリオル、ずっと考えてたんだけどね... |
エリオル | どうした? |
奈久留 | あのね、ユエとケルベロスってクロウカードの守護者でしょ。 それじゃ、あたしとスッピーは? |
エリオル | そんなの簡単だ。おまえたちは... なんだっけ? 思い出せないな。 |
奈久留 | ちょっと、エリオル! |
エリオル | 考えてみれば、今回の生涯では、魔法のカードとかを創ってないからな。 なにを守護すればいいんだろう? |
奈久留 | って、それはあたしが訊きたいよ! |
エリオル | じゃ、とりあえずこのポケモンカードでも守護してみる? |
奈久留 | エリオル... しくしく... |
エリオル | ふ、案外簡単なもんだな。 |
スッピー | どうしたんです、エリオル? |
エリオル | ここに鏡があるが、面白いぞ。 いいか、鏡というのは、さくらさんの家を覗くだけの道具じゃない。 |
スッピー | エリオル、せめて、鏡は顔を映すだけの道具じゃないと言ってくださいよ。 |
奈久留 | ねえ、エリオル、スッピー、なにしてるの〜? |
スッピー | エリオルがこの鏡で面白いものを見せてくれるみたいですよ。 |
奈久留 | え、なに、なに? |
エリオル | いいか、ここに童話が現実のものとなる。 |
エリオルが鏡に魔法をかけると、鏡は謎めいた光を放つ。 | |
エリオル | 鏡よ、鏡よ、世界で一番強力な魔導師は誰だ? |
鏡 | エリオル様、それはあなたでございます。 |
奈久留 | すごい! 答えたぁ! じゃあね、世界で一番元気なのは? |
鏡 | それはルビー・ムーン様でございます。 |
奈久留 | すごい、すごい! 違う質問にも答えた! じゃあ、世界で一番イヤミなのは? |
鏡 | それは、スピネル・サン様でございます。 |
奈久留 | あはは! スッピーだって! 世界一イヤミだって! |
スッピー | 気に入りませんね! どうせ、エリオル、あなたの思っていることを喋るんでしょ。 |
エリオル | まあ、そんなもんだ。 |
奈久留 | 次はなに訊こうかな? そうだ。 今日の数学の宿題難しいの。 x4 + 1 を因数分解するとどうなるの? |
鏡 | 宿題くらい自分でやりなさい。 |
奈久留 | もう、エリオルそっくりね。いけず。 |
スッピー | だから言ったじゃないですか。 |
エリオル | おまえら... |
奈久留 | んっと、世界で一番ういういしいのはだ〜れ? |
鏡 | それは、木之本桜様でございます。 くっくっく。 |
奈久留 | ホントにエリオルだわ。 |
スッピー | 含み笑いまで。 |
奈久留 | 空飛びたいな。 |
エリオル | じゃ、真の姿に戻って羽根を使えばいいだろ。 蝶のような優雅な羽根を持ってるんだから。 |
奈久留 | てゆーか、あたし空飛ぶホウキがほしいの。 映画で見たキキちゃん、かわいいんだもん。 |
スッピー | すぐ影響されるんだから、この人は... |
奈久留 | でも、エリオルもホウキに乗って飛びたくない? |
エリオル | いいや。 ハリー・ポッターと言われたくないからな。 |
奈久留 | あっそ。 ほら、スッピー。 こっち来るの。 宅急便屋さんやるよ。 |
スッピー | って、ジジですか、私は? |
奈久留 | ねえ、エリオル。 今度の人生ではカードを創ったりしないの? |
スッピー | エリオルカードってわけですね? |
エリオル | ふむ、創るつもりはない。 |
奈久留 | そうなの? |
エリオル | またカードを創ったら、新しい主を見守るために もう一度生まれ変わらねばならん。 |
スッピー | 逆に、もう一度生まれ変わりたくなったら、 またカードを創って理由を正当化すればいいんですよね。 |
奈久留 | あはは、スッピー、それいえてるぅ。 |
エリオル | ったく... |
奈久留 | ところでね、クロウ・リードの魂は二つに分かれて、 ひとつは日本でさくらちゃんのお父さんに、 もう一つはイギリスでエリオルに生まれ変わったんだよね。 ということは、意識的に自分の生まれる場所を選んだってこと? |
エリオル | ああ、少なくとも日本に生まれる必要性はあった。 新しいカードの主が日本で生まれることになってたからな。 |
スッピー | それで、もし愚かにも、またカードを創ってしまったら、 同じように、また生まれ変わらないといけないんですね。 |
奈久留 | じゃ、エリオルの次の生まれ変わりが、ハイチからの転校生だったら、 あは、その未来のカードを支配するのは、東洋の魔術と、西洋の魔術と... |
スッピー | ブードゥーの呪術ですね。 |
奈久留 | そのと〜り! |
スッピー | こういうのはどうでしょう。 選ばれしカードキャプターが最後の審判で 勝てなかった場合、カードに関係したすべての者は... |
奈久留 | ゾンビになっちゃう〜! あははは。 |
エリオル | おまえら、いつまでもバカやってないで。 ゾンビか... それも... 面白そうだな... |
奈久留 | ねぇ、エリオル。予想外のことが起こるのってほんとに楽しい? |
エリオル | ああ、楽しいよ |
奈久留 | そっかなぁー、わたしなんか思い通りになる方が嬉しいけどなぁ。 |
エリオル | ふむ、そうだな、そういえば一度だけ予想が外れて残念に思ったことがあるよ |
スッピー | おや、そうですか? |
奈久留 | えー、聞きたいー! どんなこと、教えてエリオルぅ! |
エリオル | チェンジのカードが発動したときだ。 あれは元々、さくらさんと私のかわいい血縁とを入れ替えるつもりで 創っておいたカードだったんだが... ケルベロスに邪魔されてしまった。 |
奈久留 | やだー、エリオルったら! さくらちゃんがあの坊やと入れ替わっちゃって、 着替えやトイレで困ってるところが見たかったんでしょー! |
スッピー | それは悪趣味ですね |
エリオル | そうじゃない |
スッピー | おや? |
エリオル | さくらさんになってしまった彼が、 真っ赤になって困っているところが見たかったのだよ。くっくっく。 |
奈久留 | エリオル、さいてー |
クロウカード編もエリオルはどこかで高みの見物をしていたのでは? と勘ぐっています。 |
エリオル | さて、みなさん。 今日の 「柊沢家の団らん」 は友枝教会からお送りします。 わたしは、ここで司祭として CCS キャラクターが 各自の罪を懺悔するのを聞いています。 聖なる仕事で、たいへん誇りに思っています。 |
奈久留 | ホントにエリオルに、人の懺悔なんか聞く資格があるの〜? |
スッピー | そうですよ。 こんな邪悪な司祭なんて見たことがありませんよ。 |
エリオル | ふん! なんとでも言ってろ... し〜! 人が来たぞ。 |
懺悔室にさくらが入ってくるが、目の前に薄い壁を隔てているので、 司祭が誰かはわからない。 | |
さくら | 牧師さん。 あたしはいけない子です... |
エリオル | わたしは神父です。 迷える子羊よ。 さあ、祈りなさい。 |
さくら | あたし、悪いことをしました。 冷蔵庫を開けるとゼリーを見つけたんです。 それはお父さんが、あたしとお兄ちゃんにつくってくれたんだけど、 一つ食べてみたの。すっごくおいしくって、お父さんお料理上手だから、 それで... |
エリオル | どうなさいました? |
さくら | あたし、もう一つにも手をのばして、お兄ちゃんの分まで食べちゃったんです! 神様、あたしを許してください! |
エリオル | 心配はいりません。 自分で思っているほど、あなたの罪は重くないですよ。 誰もあなたの食欲を否定できない。 何人もパンなくしては生きていけない。 神は、あなたの心からの正直な告白に免じて、あなたを許してくれるでしょう。 |
さくら | ありがとう、牧師さん。 |
エリオル | 神父なんですけど... |
さくらは安心して出ていく。 次に来たのは山崎。 | |
山崎 | ああ、僕ってなんて罪深いんだろう。 もう、後悔の念を感じるばかり。 |
エリオル | どうかなさいましたか? さあ、祈りなさい。 |
山崎 | 僕は、大切な友達を陥れてしまいました。 いけないことに、僕は、職員室で寺田先生のカバンを開けて、 プレイボーイを見つけてしまいました。 お色気たっぷりの写真に惹かれて、盗みをはたらきました。 |
エリオル | つまり、他人の所有物を窃取したわけですね。 |
山崎 | そうです。 でも、罪の意識から逃れるために、 その雑誌を親友の柊沢くんの机に入れてしまったんです。 不幸にも、後で寺田先生がそれを見つけて、柊沢くんは職員室に呼び出されて... きっと、ひどく叱られたに違いありません。 |
エリオル | ぐぬぬ... おまえだったのか! |
奈久留 | ちょっと、エリオル、落ち着いて。 |
スッピー | ご自分が聖職者であることをお忘れなく。 |
山崎 | 神父さん? どうかしたんですか? |
エリオル | な、なんでもありませんよ。 その... 正直な告白に免じて、 きっと神はあなたを許してくれるでしょう。 それから... お友達も、あなたを許してくれるでしょう... いつかは。 |
山崎が懺悔室から出た後、ミラーのカードが入ってきた。 | |
ミラー | ああ、わたしの懺悔を聞いてください。 |
エリオル | 髪をそんな緑色に染めたことを後悔しているのですか? |
ミラー | 違います。 百年以上生きてきましたが、その間に悪いことをやってきました。 最近では、男の人をだまして、ひどいケガを負わせてしまいました。 |
エリオル | おお、神から聞きましたが、既にその罪は許されていますよ。 最近、あなたが正義のために働いていることを神は知っています。 |
ミラー | 神様がそうおっしゃったんですか? |
エリオル | もちろんですとも。 |
ミラー | あ、それだけじゃないんです。 昔は、クロウ・リードという偉大な魔術師に仕えておりました。 クロウが邪悪な活動をしに行く時は、わたしはしばしば、 彼のアリバイ工作をしていました。 彼が下着泥棒をしている間に。 |
エリオル | 大丈夫。 それは罪ではありません。 神は寛大にして... |
奈久留 | なに言ってんのよ、エリオル?! さっきも言ったけど、エリオルに人の懺悔を聞く資格なんてないわ。 |
スッピー | 結局悪いのはエリオルですね。 |
ミラー | ん... 神父さま、どうかしたんですか? |
エリオル | こら、ルビーにスピネル、放せ。 |
奈久留 | ほら、次はエリオルが罪を懺悔する番だからね! |
エリオル | わたしは間違ったことはしない! 誰にものを言ってると思ってるんだ? わたしは偉大な魔術師クロウ・リードの生まれ変わりだぞ! |
ミラー | え? ちょっと! あなた、クロウ・リードね! こっちに出てきて謝ってよ! あなたが犯した罪のせいで、わたしが何度警察に逮捕されたかわかってるの?! |
エリオル | まずい! ミラーに正体を気づかれた。 退散するぞ! |