はじめに – 作者記

これは2002年のクリスマス用に書いた話です。 ひょっとするとみなさんは、少し短いと思うかもしれませんがご了承ください。

注意 この話は 甘ったるい S+S ロマンスです!

訳者記 このファンフィクションは、 さくらちゃんたちが高校2年生になった時の話です。 中に出てくる Mizui 先生は、 行動パターンからして 観月先生 がモデルと思われますが、 水井先生と書くことにします。


免責事項 作者は カードキャプターさくらの著作権とは無関係です。 しかし、この話の著作権は 作者 Sakura aka Michelle が有します。

最高のクリスマスプレゼント

短編
原題: The Best Christmas Present Ever
作者: SAKURA AKA MICHELLE
翻訳: Yuki Neco


小狼は教室の中でさくらが寒さに震えるのを見ていた。 クリスマスが目前に近づき、日ごとに寒さが増してきている。 小狼はため息をついて、コートを脱ぐとコートを着てこなかったさくらに コートを手渡した。

「これを着た方がいい。」 と、小狼は言った。

「でも、小狼くんが...」

さくらが下を向きながら、少し赤くなっている様子を小狼は見逃さなかった。 「これくらいの寒さ、大丈夫だ。 ほら。」 と言って、小狼はさくらに コートを掛けてあげた。

さくらが微笑んでコートを着ると、それを見て知世が笑っていた。 「知世ちゃん!」 さくらは、顔を真っ赤にして言った。

「わたしはなにもしてませんわよ。」 と、知世は無関係を装う。

「クリスマスイブが待ちどおしいね! 学校でやることになってる クリスマスパーティのことが、すごく楽しみ!」 と、さくらは声を上げる。

「クリスマスイブまでは待たなくていいのよ、木之本さん。」 教室の前まで歩いてきた水井先生がそう言って、 教室が静かになったことを確認してから、話を続けた。 「クリスマスパーティは 23日、つまりあさってから始まります。 パーティは、自主計画をするってことで、一日早くなったのよ。」

この知らせを聴いて、教室に歓声がわき起こった。 さくらは楽しそうに笑い、知世は、パーティの間中さくらの ベストショットをビデオ撮影しようと決めて、目がキラキラモードになった。 これを越えるクリスマスイベントは二度とないだろうと、知世は少しの間思った。 一方、小狼は、クリスマスの日に、さくらに想いをうち明けるかどうかで 葛藤していた。

「目的地にはみんな一緒に出発しますから、その日は学校に集合してください。 スキー場の近くにホテルを手配してますから、たっぷりと楽しめますよ。 当日にくじ引きをして、二人組に分けます。」 水井先生はさらに説明を続けた。 「その二人組はパートナーと言うことで、ホテルも同じ部屋に宿泊します。」

「ほえ? 同じ部屋?」

「男子と女子は無関係にパートナーを決めます。 面白いでしょ?」 と水井先生は答えた。

水井先生の言葉に教室は静まりかえり、なんの反応もなかった。 水井先生は冷や汗をかきながらため息をつき、反応がないことにがっかりした。 その時、エリオルが口を開いた。 「それは本当に楽しそうですね。」 エリオルはそう言いながら、さくらと小狼をジロジロと見た。 二人は怒ったような顔でエリオルを見る。

「その日は制服を着てくるんでしょうか?」 と、知世が質問した。

「制服はいりません。」 と、首を振りながら、水井先生は答えた。

知世は嬉しさで飛び上がりそうになりながら、 「さくらちゃんのためにコスチュームをお作りしますわ。」 と、さくらに耳打ちする。

さくらは椅子からズリ落ちて、汗をかきながらひきつった笑いをした。 小狼は心配そうな目で、さくらに大丈夫かと訊いた。 「だ、大丈夫。」

すっかり夢見心地になっている知世の影ではエリオルがほくそ笑んでいた。 「部屋に二人っきり。 面白そうですね...」 とつぶやく。


運命の日 12月23日、学校では

さくらはいつもより早く登校し、みんなはこれから地球が なくなってしまうかのようにいそいそしていた。 小狼を除いては。 小狼は、さくらが寝ているような姿勢で席にいるのを見て、 首を振ってコートを脱いで、毛布のようにさくらに掛けてあげると、 席についた。

「大道寺、昨日こいつに何かしたのか?」

「わたし?」 知世は話した。 「わたしはただ、さくらちゃんを家に ご招待して、コスチュームの試着をお願いしただけですわ。」

小狼はため息をついて目を閉じた。 「やっぱり...」

さくらは寝ぼけて体を動かし、椅子から落ちた。 さくらはビックリして目を覚まし、起きあがるために机をつかむと、 力強い腕が自分を支えてくれていることに気づいた。 さくらはまばたきをしてそれを見つめ、息をのんだ。

知世はビデオカメラを取り出して、その瞬間を撮影していた。 見つめ合った二人は、その瞬間、自分たちがどこにいるのかを すっかり忘れていた。

さくらは、再び瞬きをして、自分がまさに小狼に しがみついていることに気づいた。 みんなはその様子をニタニタしながら見ていた。 さくらは小狼から飛び退き、頬が紅潮してきているに違いないと 自分で思いながら、それを必死に隠そうとして、 どもりながら 「ありがとう」 と言った。 次に、さくらは知世の手にビデオカメラがあることに気づき、 「知世ちゃん!」 と、大声を上げた。

「あらまぁ!」

「大道寺、今度カメラをもってるのを見たら、 そのカメラをブッ壊すからな。」 と言って、小狼は知世を脅す。

知世はぎょっとして、大事なビデオカメラを背後に隠すと、 助けを求めるようにエリオルの方を向いた。 エリオルは知世の手をとって、「今度は、どうやったら見つからずに できるか教えてあげますよ。」 と耳打ちした。

知世は納得したようにうなずいて赤くなっていた。 それを見た小狼は、やっぱりというような表情で二人を見ていたが、 いったいどうしたのか、とさくらが訊きだせないうちに、水井先生が 入ってきたのでみんなは急いで席に戻った。

「さて、みんな...」 水井先生は話し始めた。 「くじ引きを始めますよ。 これでクリスマスパーティのパートナーが決まります。」

水井先生は大きな箱を出して、中から紙切れを取り出すと、 それには生徒の名前が書かれていた。

「高尾さん、あなたのパートナーは...」

「木之本さんのパートナーは...」

さくらはギュッと目をつぶり、ドキドキしながらパートナーの名前を待った。 魔力の気配をちらちらと感じ、混乱したように目をパッと開いた。

「李くんね。」 と、水井先生が言った。

さくらは固まって、小狼の方を振り向くと、 小狼も同じようなショックを受けた表情をしていた。 「かわいいわたしの親類よ、ホテルの部屋でさくらさんに なにもしないでくださいね。」 と言って、エリオルは小狼をからかった。

教室には笑いがわき起こり、さくらと小狼は真っ赤になった。 「おい!」 と、小狼は反抗するように声を上げ、 味方を求めるように、さっと さくらの方を振り返るが、 やはり、さくらは赤くなっているだけで、小狼の援護をしてくれそうになかった。 小狼はため息をついて窓の外を見た。


10分後...

「さて、みんな、パートナーは決まったわね。」 と、水井先生が話はしめた。 「じゃ、荷物を持っていきましょう。 パスに乗りますよ。 バスはパートナーと一緒に乗ってね。」

小狼は立ち上がってさくらを待った。 さくらが元気なさそうにしているので、 「なにか手伝おうか?」 と訊いてみた。

「ほえ?」 さくらは瞬きをして、小狼を見上げた。 「大丈夫... 自分でできるから。 ありがと。」

さくらは教室を出て、その後を小狼が追いかけた。 二人は先生の後をついて、校庭の外で待っているバスまで歩いて行った。 一人一人、生徒はバスに乗り込み、シートが座り心地よいと言って くつろいでいる。さくらは座る席を決めて、小狼がその席で納得するのを待ってから シートに腰掛けた。 小狼はさくらの隣に、さくらは窓際の席に座った。 小狼のすぐ後ろはエリオル、さくらのすぐ後ろには知世が座っていた。

「今日はいい天気だな。」 と言って、小狼はさくらの返事を待つ。

さくらのかすかな寝息が小狼に聞こえ、振り向くと、 背もたれの中でちぢこまって さくらが気持ちよさそうに寝ていた。 大道寺のお手製コスチュームを着て疲れたんだな...

バスはホテルに向けて出発したが、乗っていること自体は退屈なことだった。 バスが揺れるたびに、さくらは揺り動かされ、またちょうどいい場所に 戻ろうとする。 小狼は、かすかな笑みを浮かべ、さくらのことを気の毒に思った。 小狼は、さくらを起こさないように注意しながら、バスの壁で支えるように して、自分はバスの中を見るように斜めに座って、 さくらを支えるような姿勢をとった。

さらに、さくらを引き上げ、自分にもたれかかるようにさくらを寝せた。 さくらは静かな息づかいをしながら、小狼に抱きかかえられるように すり寄ってきた。 小狼は、聞き覚えのあるスイッチの音を聞いて、 ムッとうなった。 上を向くと、知世がビデオカメラをもって頭上にいた。

知世は恥ずかしそうに笑いながら、さくらを指さし、 「さくらちゃんは眠ってますわ。 起こさないように。」 と言った。

バスはさらに揺れ、小狼は、さくらを支えるために抱きかかえた。 「今度、カメラをもっているのを見たら壊すと言わなかったか?」

「李くんはそんなことする人じゃないって、 柊沢くんがおっしゃいましたわ。」 と、知世はしたり顔で笑いながら言った。

小狼は不機嫌そうな顔つきで窓の外を見た。 いつになったら着くことやら?


しばらくたって...

これから数日間滞在するホテルが小狼の目に見えてきた。 気が進まないが、さくらを起こさないといけなくなってしまった。 小狼はさくらの方を揺すって静かに呼びかけた。 「さくら? もう着くぞ。 早く起きろ。」

さくらはそれでも眠り続け、小狼はため息をついて、もう一度起こそうとする。

さくらは体を動かすが目を開けようとしない。 「さくら、気づいてないかもしれないが、 おまえは俺の上に乗っかって寝てんだぞ。 この状態を先生に見つかったらまずいから、早く起きろ。」

この言葉でハッと我に返り、さくらはすぐにパチッと目を開けた。 さくらはビックリして叫びそうになったが、小狼は口を手で覆って、 それを防いだ。 小狼は首を振って、ダメだという合図をすると、 さくらはわかったと言うようにうなずいた。

「愛し合う二人。」 と、エリオルが言葉を添えると、 二人は真っ赤になってしまった。 「面白いですね。」


ホテルでは...

パートナー同士は、それぞれに、鍵を受け取ると自分たちの部屋に 荷物を置きに行った。 15分後に集合することになっていた。 主役の二人は、部屋の中でベッドを見て唖然としていた。 一つのベッドで寝るの?!

「こんな企画、誰が考えたんだ?」 と、小狼は不服そうに言った。

さくらは微笑んで、その部屋のベッドに対して不満をもっている様子もなく、 荷物を開けていた。 小狼はぎこちなくさくらを見て、 「一つのベッドで寝ることを何とも思わないのか?」 と訊いてみた。

さくらはほんのちょと動きを止めて、数秒後に小狼の方を振り向いた。 「なんともないよ。」

気づくと小狼もさくらに微笑み返した。 「じゃ、そろそろ行こうか。」

「もう行くの?」 さくらは、時計を見て顔をしかめた。

小狼が起こすために手を差し出すと、さくらは笑うように手をとった。 さくらは、小狼が肘を曲げたところを手でつかみ、二人は部屋を出た。

「知世ちゃんはどこかなぁ?」

「多分、俺たちの後ろだ。」 と、小狼は不機嫌そうな顔で言った。

さくらは振り返って息をのんだ。 「どうしてわかったの?」

「さあな。」

二人は、遠くに水井先生と他の生徒がいるのを見て、 急いで駆けつけた。 「今日の午後と夜は、ずっと自由時間です。 明日の朝は、必ず、8時にここに集合してください。」 と、 先生が言うと、気持ちのよい返事が返ってきた。

「あたしたち、なにしようか?」 と、さくらは訊いた。

「雪だるまでも作りますか?」 と、知世が言ってみた。

さくらは笑いながら賛成した。 「じゃ、手袋もって来なきゃ。」

知世とエリオルが部屋に向かい、さくらがその後を続いて行こうとすると、 小狼がさくらを止めて、「俺がとってくるから、ここで待ってろ。」 と言った。

さくらは疲れていたので、うなずいて、礼を言うように小狼に微笑んだ。 小狼は目をそらして、部屋に戻って行った。 さくらはぐったりしたように柱にもたれかかり、あくびをした。 突然、さくらは誰かに捕まれて、直感的にその手をはねのけた。

「ねえ、俺たちと遊ばない?」

さくらは拒絶するような目でその男たちを睨み、ふりほどこうとしたが、 強くつかまれているので逃れられない。 「放してください!」

「遠慮するなよ。 絶対、楽しいからさぁ。」

「聞こえないの? 放してよ!」 と叫ぶと、さくらの目に小狼が映った。

さくらは引っ張っていかれ、さくらは力一杯に抵抗する。 「おとなしくしろよ。」 と脅すように、男は言った。

「小狼くん!」

小狼はさくらの声がする方に振り向いて、さくらの姿を見つけた。 男たちがさくらを引っ張って連れて行っている! 小狼は駆けつけて、男たちの行く手をさえぎった。

「そこをどかねえと...」 と、男が小狼を脅す。

「俺の彼女になにする気だ?」 と、小狼は激しく男たちを睨みつけた。

男たちが驚いてさくらを放すと、さくらは涙ぐんで、小狼の後ろに隠れた。 さくらは小狼のシャツをしっかりつかんで、放そうとしない。 「二度と現れるな!」 と、小狼が言うと、男たちは慌てて逃げ去った。 小狼はさくらを見ると、「大丈夫か? ケガしなかったか?」 と、 優しく声をかけた。

さくらは首を振って、小狼のシャツをもつ手をゆるめた。 小狼は、知世とエリオルが来るのを待っている間ずっと、 もう大丈夫だというように優しくさくらをなでていた。 実は、小狼に追い払われた男たちは、知世とエリオルに頼まれて いただけっだ。 「ありがとう。」 と、さくらは小狼に言った。

「って、なにが?」

「あたしを助けてくれたこと。」

小狼は笑いながら、「当然のことをしただけだ。 おまえにケガさせられるわけないじゃないか。」 と言った。

その言葉でさくらは顔を赤くした。 小狼はさくらに手袋をわたし、 毛糸の帽子をさくらにかぶせてあげた。 知世とエリオルが現れるまで、二人はしばらく待った。 さくらはホテルの入口から飛び出して、まわりの雪を見て微笑んでいるのを見て、 小狼は首を振った。 さくらは雪の玉を作って、みんなを待った

続いて小狼がホテルから出ると、さくらは小狼を雪の玉をぶつけ、 ムッとしたような表情を見て笑っていた。 知世も雪合戦に加わり、エリオルはそばに立ってみていただけだったが、 雪をぶつけられ、加わって知世を攻撃した。

四人は一日中雪で遊び、楽しそうに笑って過ごした。 彼らは力を合わせて雪だるまを作ったが、頭がずり落ちると声を上げて笑った。 すぐに外は暗くなり、一日を終える前に、四人は夕食を食べに戻った。

小狼が風呂から出ると、さくらはベッドで眠っていた。 寒くないように、さくらに布団を掛けてあげると、小狼は、 さくらが寝ているベッドわきの床に毛布を敷いて自分の寝床を確保した。

小狼は明かりを消して眠りに就いた。


12月24日

小狼は目を覚まし、部屋の中に予想外のものが、自分のすぐ横に予想外の 感覚を覚え、目をパチパチさせた。 小狼は横向きに寝ていて、 自分の腕の先を目で追うと、さくらがいた。

ちょっとの間、さくらの寝姿を見て小狼は心から微笑みを浮かべた。

しかし、次の瞬間には我に返り、緊張してしまった。 さくらはベッドで寝ているはずでは! 自分と同じ床に寝て、さくらはなにをしてるんだ?

さくらを起こしてしまうのが怖くて、小狼は動くこともできない。 さくらは、誰よりも寝ないといけないのだが、さくらが目を覚まして この醜態がばれないうちに、小狼はその場からは離れないといけないと思った。 そんな危険は冒したくなかった。

小狼はさくらを支えながら、少しずつ後ずさりをして、さくらから離れようとして、 さくらが寝返りをうつたびに息を止めた。 そして、さくらがまだ寝ているとわかると、ほっと息をつく。 小狼は、仰向けに寝た状態で、やっと、腕の長さ分だけさくらから離れた。

しかし、さくらは寝返りをうって小狼に覆い被さってきたので、慌ててしまう。 狂ったように赤面して、もう一度、 起こさないようにさくらを自分から離そうとした。 小狼は、自分に乗っているさくらの体重を心地よく感じた。 ため息をつくと、小狼はムダなあがきをやめて、 そのまま抱きかかえるような体勢に落ち着いてしまった。

突然、ドアをノックする音がして、ドアが静かに開くと小狼は 気が動転してしまった。 知世が部屋に入ってくると、小狼はさっと上体を起こし、 さくらがずり落ちる、かすかに悪態をついた。 運良く、さくらが床にぶつかる前に小狼はさくらを抱え上げ、 さくらは小狼の胸に顔をうずめる状態になって、眠そうに目をこすっている。

「小狼くん?」 さくらは夢見心地にしゃべった。

「しっ... さくら、もう一度寝るんだ。」 と、小狼はささやいた。 (作者注: 何事にも、最初というものがありますからね... =D)

さくらはうなずいて、小狼に抱きかかえられたまま、倒れ込んで眠りに入った。 小狼が時計を見ると、まだ午前7時だった!

知世は二人の様子に驚き、唖然として、その場から離れられなかった。 他の生徒たちが大勢、興味津々に覗きに来ていた。 小狼は自分の額をたたく。 ところが、大きな叫び声でさくらは 起こされてしまった。 なに... さくらは驚いて、よもや、 小狼の抱擁から飛びのき、寝起きの目であたりを見回すと、 視界はぼやけているものの、たくさんの人がドアの所に立っているのが見えた。

「どうしたのぉ?」 と、さくらは小狼をのぞき込んで訊いた。

小狼はため息をついて立ち上がり、「なんでもない。 もう起きる時間だ。」 と言った。

さくらはしかめっ面をして、また毛布の上に倒れ込み、小狼が知世を 部屋の外に押しだし、起こったようにドアをばたんと閉める間も、 さくらは寝ようとしていた。 さくらがかすかに寝息を立てていることに気づき、 小狼はうなった。 小狼は首を振った後、床からさくらを抱き上げ、 ベッドに寝かせた。 そうして、小狼はシャワーを浴びに行った。


さくらは眠っていたが、突然誰かに抱きつかれた。 目を覚ましたさくらがビックリして大声を出したので、 小狼は腰にタオルを巻いてバスルームから出てきた。

「なんだ... てっきり泥棒でも入ったかと思った。」 と、小狼は 知世を見ると言った。 (作者注: どうして? と思っている人へ... 知世ちゃんはさくらちゃんたちの部屋の合い鍵をもっていました。 エリオルくんが作ってくれたんです。 いけませんねぇ...)

小狼の声を聞いて、その二人の少女は、振り返ると、小狼の姿を見て 赤面するよりも前に、反射的に目を大きく見開いてしまった。

「二人ともどうしたんだ?」 と、小狼が問う。

濡れた髪からしずくを垂らしながら立っている小狼をちらりと見て、 「なんでもないの!」 とさくらは言った。

「さくらちゃんが真っ赤になっているのは、初めて李くんの そんなものを見たからですわ。」 と、知世が言い終わらないうちに、 さくらは知世の口を押さえて黙らせる。

小狼はよくわからないような表情で二人を見てから、 バスルームに戻った。


その後で...

水井先生や他の先生は、自分が担任するクラスをスキー場に連れて行った。 生徒たちは、目の前の美しい形式にうっとりとし、降っている雪が まわりの様子があっと言うようなすばらしい景観にしている。

さくらは、なかば、小狼を引きずってくるような感じで、 スキーのレッスンを楽しみにしていた。 小狼は、以前スキーしたことを思い出し、上機嫌ではなかった。

「心配いらないよ、小狼くん。 今度はもっと上手に滑れるよ。」 と、 さくらは小狼を元気づけた。

小狼はなにも言わなかったが、さくらの言葉を受け入れてうなずいた。


スキーのレッスンは期待していたよりも、すいぶん退屈でしようがなかった。 所々で、生徒たちがあくびをしている様子が思い浮かぶくらいに。 さくらはしかめっ面をして、「あたし、コーチなしでスキーがしたい。」 と、 小狼に言った。

小狼は、子供をあやすように、さくらの頭に手をおいて、 「そのうち自由に滑らせてもらえるから。」 と言った。

しかし、そんな時が来ることもなく、さくらはがっかりしていた。 ほとんど日も暮れて、レッスンが終わると、生徒たちはホテルの外で キャンプファイヤーとダンスの準備に取りかかった。


午後10時 キャンプファイヤー

高校2年全体で二つのキャンプファイヤーを取り囲むことになった。 さくらはぎこちなく小狼の隣に座っていた。 いまだに、小狼のそばにいるだけで赤面してしまう。 その場所に置いてあるベンチに隣り合わせに座ると お互いの脚が接触しそう。 さくらはできるだけ動かないように気をつけた。 もし動いたら、小狼と脚がぶつかって、そして?

そのような考えを妨げるように、小狼がさくらをベンチから引き起こし、 いたずらっぽい笑みを浮かべた。 さくらはますます赤くなり、 目を合わせることを拒む。 「この曲、踊らないか?」

「うん!」

小狼は大勢の生徒がいる場所にさくらを連れて行き、さくらを腕に抱いて ダンスを始めた。 二人は曲に合わせて、軽やかに左右に揺れ、 さくらは満足感の息を漏らした。

「どうして黙ってるんだ? いつもと感じが違うな。」 と、踊りながら小狼が尋ねた。

「そんなことないよ。」 と、さくらは否定する。 「あたしは、ただ...」

「そんなことないだろ。」

さくらは、しかめっ面をすると、背後にいる人に押されて小狼のもとによろめいた。 振り返ると、知世がウィンクしている姿が見えた。 さくらはわけがわからなくて、瞬きしながら知世を見て、それから、 自分が小狼にすごく接近していることに気づき、恥ずかしくなって後ずさりする。 しかし、小狼はさくらをつかんで、自分のもとに引き戻す。 さくらは意を決して小狼を見上げるが、小狼は、首を振ってホテルの方を指した。 さくらが首を振ってそれを断ると、小狼はため息をついた。

「なせそうするんだ? 俺を避けているのか?」

「そんなこと言ったら、小狼くんはお兄ちゃんにひどい目に遭わされる。 だから、あたし、なにも言わない。」 と、さくらは答えた。

「どういうことだ?」

「まだ、心の準備が。」 と、さくらは危なっかしい口調で答え、 目をそらした。

小狼はうなずいて、わかったということを示した。 「準備ができたら言ってくれ。 な?」

さくらは、ピンクがかった指を伸ばして小狼の指にあてると、 ダイダン名自分の行動に赤面してしまう。 「わかった。」


午後11時55分

生徒たちや、そこにいる人たちはすべて、静まりかえり、 クリスマスが来るのを待っている。 あと5分でクリスマス! (作者注: 短い時間かもしれないけど...) それに引き替え、さくらはあまり嬉しそうではなかった。小狼も。

帰る前に言わないと... でも、お兄ちゃんがきっと気づいて... と、さくらは考えていた。

その一方、 言わないといけないよな? でも... 断られたら? と、 小狼は考えていた。

「5秒前... 4... 3... 2... 1... メリークリスマス!」 先生たちが叫ぶと、 みんなの中から歓声が上がった。


その後、ホテルの中で、みんなが寝静まった後...

もう既に午前4時になっているのに、小狼は寝ることができずに、 さくらに気持ちをうち明けるかどうか考え込んでいた。 小狼は毛布を指でいじりながら、さくらを驚かせずに告白する方法を考えた。 なんとかしなければ。

小狼はため息をつき、寝返りをうってさくらが寝ているベッドを見た。 さくらがベッドの中で身動きし、寝返りをうつので、 ベッドから落ちて痛い目に遭うのではと、小狼ははらはらした。

さくらは、ちょうど、小狼がいる方のベッドの縁で危なっかしく眠っている。 小狼は息を止め、さくらが落ちないことを願ったが、さくらはベッドから落ち、 小狼の力でそれを未然に止めることはできなかった。

小狼はさくらに飛びついて、ギリギリのところでさくらを受け止め、 安心して息を漏らした。 さくらは赤ん坊のように、小狼の腕に抱かれたまま 眠っていて、なにか寝言を言っている。

「小狼くん...」 と、さくらは、かすかにつぶやいていた。 「あたし言えない... 小狼くんが好きだなんて。。。 小狼くん... お兄ちゃんに殺されちゃう... 好きだなんて言わせないで...」

その言葉を聞いて小狼の息が止まった。 さくらは小狼のことが好きなのだが、勇気がなくて言い出せなかったのだ。 それも、桃矢が小狼をひどい目に遭わせるかもしれないと言う理由もあったから。 みんなが寝静まっているというのに、小狼は、大声で喜びたい気持ちになった。

小狼はさくらをベッドに戻し、二度とベッドから落ちないように、 添い寝をすることにした。 さくらが激しく寝返りをうたないように、小狼はさくらを腕に抱いた。 小狼は、桜の花のような香りを嗅いで、眠りに就いた。


翌朝 12月25日 クリスマス

太陽が窓から差し込み、ベッドを照らし、さくらが目を覚ました。 さくらは目を細めて、まぶしく差し込む日光を見て、ぼうっとしながら 上体を起こして、床に目をやって小狼を探したが、誰もいなかった。 さくらは、再び瞬きをしてみたが、小狼は床の上にいなかった。

さくらは視線をバスルームに移動させると、ドアが開いていた! 小狼くんはどこ? すぐ横で、かすかな寝息が聞こえ、 それに神経を集中して振り向くと、いた! 小狼はまだ眠っていた。 さくらはそれを見て微笑んだ。 眠っている小狼は、きつい感じが少しもしない。 不機嫌そうな表情がすっかり顔から消え、少年っぽい顔をしている。

衝動に負け、さくらは小狼に寄りかかり、頬にキスをした。 小狼が体を動かすとさくらはあわてふためいたが、すぐに、また体を寄せ、 なにもなかったかのように振る舞った。 さくらは、なにか悪いことをしているところを 現行犯でつかまった子供みたいに、すっかり赤くなっていた。

「さくら、おはよう。」 小狼は、力強い腕を伸ばしてさくらにあいさつした。

「おは... おはよう。」

「今、なにしてた?」 と、からかうように小狼が訊く。

「な、なにも!」 と、さくらは混乱した口調で答えた。

実は、さくらが目を覚ますより前に小狼は起きていて、目を閉じたまま じっとしていただけだった。 もちろん、さくらはそんなことは知らなかった。 「そう言えば、まだおまえからクリスマスプレゼントもらってなかったな。」

さくらは驚いた顔つきで、小狼を見ていった。 「あたしももらってないよ。」

小狼は笑いながら、「目を閉じて見ろ。」 と言った。

「ほえ?」

「さくら、目を閉じろってば。」

小狼がそう言うので、さくらは目を閉じた。 小狼は、買って用意していたネックレスをポケットから取り出し、 さくらにかけてあげた。 小狼は後ろにのけぞって、どんな感じに見えるかを確認し、 その見栄えにすっかり満足した。

小狼はさくらを見て、さくらがとてもかわいらしく見えることに微笑んだ。 「さて、今度はさくらからクリスマスプレゼントをもらう番だな。 まだ、目を開けちゃダメだ。

「あたし、なにも買ってないの。」 と、さくらは言った。

「そんなことは別にいいよ。」 と言って、小狼はかがんで、 さくらの唇にキスをした。

唇が触れた瞬間、さくらは息をのみ、パッと大きく目を見開いた。 さくらが反応できないうちに、それは終わってしまった。 小狼は満足げな表情を浮かべている。 「な?」

「ただ、『愛してる』 って言ってくれ。 本当は言いたいんだろ。 言いたくなければ言うな。 俺もおまえを 『愛してる』 って言いたい。」 と、 小狼は告白した。

さくらは、さっきのキスから未だ自分を取り戻せなかった。 さくらは首を振って、ショックを振り払おうとした。 「なぜわかるの?」

小狼はにやりと笑って、「なんとなく。 さくら、信じるんだ。 おまえの兄さんは俺をどうかするなんてできない。」

さくらは困った様子で小狼を見つめた。 どうしてあたしが考えてること、わかったんだろう?

「あたし...」 さくらは、真っ赤になって下を向きながら話し始めた。 「あたし、小狼くんが好き。」

「それでいい。」 と言って、小狼はさくらに微笑みかけた。 「さくらは今、そう言ってくれたけど、そのことを後悔したらダメだ。」

さくらは小狼の腕の中に飛び込み、愛を語るように、頬を小狼の胸に当てた。 そのため、小狼の顔は真っ赤なトマトのようになった。 「あたし、小狼くん大好きダイスキだいすき大好き!」

「さくら、俺もだ。」


ちょうどその時、知世とエリオルが部屋の外に立っていて、 にやりと笑い合っていた。

「やりましたわね。」 と、知世が言った。

エリオルは笑いを浮かべながら、自分たちの部屋に知世を引き入れた。 「次は僕たちの番ですよ。」

知世はハッとして、エリオルを見た。 「どうしてわたしの気持ちを?」

エリオルは真面目な顔で答える。 「ぼくも同じことを考えてるからですよ。」

「ああぁぁ...」


数日後のペンギン公園

さくらと小狼は手をつないで、足を踏み出すごとに、 つないだ手を大きく振って歩き、小狼がなにか言うと、 さくらは楽しそうに笑っていた。

「言ったと思うが、おまえの兄さんは俺になにもしてこないだろう。 おまえの兄貴は... なんて言うんだっけ? その、鈍いからな。」

「お兄ちゃんには、あたしたちのこと言ってないの。」

「なら、言っちゃダメだ。」 小狼は、そう言ってにやりと笑った。

すると、二人の背後で声がした。 「てめぇ、俺の妹になにしてんだ?! このガキがぁぁ!!!!!」

二人は飛び上がって、後ろを振り返り、それから、 読みとりようのない表情でお互いの顔を見合わせた。 「まずい!」 さくらと小狼は同時にそう言うと、命がけで走って、 激怒した桃矢から逃げ出した。

「言わないままにしといた方がいいこともあるんだな。」 と、 ようやく桃矢を振りきった時に小狼は言った。

「ホントだね!」

突然、小狼は何かに顔をしかめた。 それに気づいたさくらは、 「小狼くん、なにを見てるの?」 と尋ねた。

「ん?」

「なにを見てるの?」 と、さくらはもう一度訊いた。

小狼は遠くにいるカップルを指さし、「あいつら、見覚えあるよな?」 と、 さくらに訊いた。

「知世ちゃんだ!」

小狼はさくらを前に引っ張って、ちょっと黙っているように言うと、 目がいたずらっぽく輝いていた。 「ちょっと邪魔してやろう。」

さくらは驚いたフリをして、「どうするの?」 と、訊いてみた。

小狼は笑って、さくらを連れて遠くに行った...


クリスマスから数日後の朝、ペンギン公園では、 二組のカップルが人知れずデートをしていた。 しかし、その平和な朝も、一方のカップルから聞こえた次の言葉で、 平和ではなくなってしまった。 「なぜここに? わたしのかわいい親類め、 どこかに行って、ほっといてくれ!!!」 と。

他の三人は笑い転げた。 巣にいた鳥たちは驚いて飛び立ち、 公園はすっかり静まりかえり、ダブルデートはその後も続いた。

天気は彼らとは相性が悪いらしく、空に黒い雲が立ちこめ、 すぐに雨が降り出した。 さくらと小狼、それから、知世とエリオルは、 「なんでこんな目に遭うの?」 と大声で不平をこぼした。


おわり

あとがき – 作者記

エンディングはちょっとヘンになっちゃいましたが、 急いで仕上げたものとご理解ください。*ふぅ* この クリスマスプレゼント のお話を、みなさんは笑いながら 読み進められたことと思います。 十分笑えましたか? この話には、まだ、なにかが足りない気がするのですが... みなさん、感想をお願いします。


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