(仮) SSダイアリー2005

作: 京成特急for佐倉

第2話 8月13日 (土) 空に咲く花

15:25、友枝学園駅北口。お盆に入り、行き交う人の数は若干減ったものの、 浴衣姿の人ががかなり多い。そんな中、切符売り場の横で、 やはり浴衣姿のさくら達6人 (さくら、千春、井原 美紀、川村 恵、 高橋 有希恵、吉田 小百合) が待ち合わせていた。

知世 「お待たせしました。」

その時、知世が来た。こちらも浴衣である。

さくら 「紹介するね。同じチア部の井原美紀ちゃんと 吉田小百合ちゃん。 みきちゃんとゆりちゃんって呼ばれてるの。」

知世 「初めまして。大道寺知世と申します。」

美紀 「あ、ども、初めまして。」

小百合 「こっ、こちらこそよろしく!」

美紀 「(小声で) 話は聞いてたけど、やっぱりおしとやかで美人だよねぇ」

小百合 「(小声で) しかも都立友枝合唱部。さすがさくらちゃんの大親友だけあるね。」

そしてそこに男子4人 (小狼、神尾、原、山本) がやってきた。こちらは小狼だけ浴衣姿だ。

原 「ちぃーす。」

山本 「あれ?女子全員浴衣じゃん?」

神尾 「っつーか、大道寺じゃん! これまたどうして来てんの?」

知世 「(意味深な笑顔で) あら、何か文句でも?」

神尾 「いや、なんにもございません。」

美紀・小百合 「でも、ちょっと怖いかも…

この瞬間、知世以外は背筋に寒気が走ったに違いない。

原 「だってよう、こっちは李だけだぞ? 浴衣」

彼らが振り向くと、5メートルほど離れたところに小狼がいた。 こっちに 来るのが嫌らしい。 山本が無理矢理連れてきた。

小狼 「バカ、押すなよ。」

神尾 「こっちに来るのが嫌なだけだろ。一人浮いてるから。」

山本 「しかもこの浴衣、『彼女』 さんお手製らしいよ。 (小狼のゲンコツを食らう) いてっ!」

顔が真っ赤な小狼「黙れ。」

美紀 「(小声で)やばい、今なら私、ゆりの気持ち分かるかも。」

有希恵 「あんたも惚れたんかい!?」

さくら 「ほえ〜 (汗)」

立ち話もそこそこに、彼らは電車に乗り込んだ。晴海埠頭で行われる、 東京でも一、二を争う大きさの花火大会に行くのだ。 しかし、見る場所は ちょっと特殊な場所である。というのも、そこは寺田と利佳の住む マンションのテラスだからだ。

さくら達の乗った準急電車は、途中から地下鉄に乗り入れる。 駅に停まるたび、 浴衣を身にまとった乗客を乗せてゆく。 しばらくして、電車は寺田家最寄りの 月島駅 (花火の会場の最寄り駅はひとつ先) に着いた。 寺田家は駅から商店街を抜けた、 徒歩数分の所にある8階建てマンションだ。 このマンションの7階の端の部屋に 住んでいる。 オートロックのため、入口で部屋番号を押し呼び出す。 ドアが開いて、 エレベーターで7階へ上がる。

さくら 「利佳ちゃん! 来たよ〜!」

利佳 「みんないらっしゃい。 待ってたわ。 靴持ってテラスに出ててね。」

ぞろぞろと、靴を片手に廊下を抜けるとリビングへ出る。 このマンションは6階から 一室ずつ少なくなるので、6〜8階の南端の部屋は、一室分の広さのテラスがあり、 利佳の住まいは7階のそれに当たる。 テラスには、バーベキュー用のコンロが 用意されていた。

さくら 「わぁ〜、すごーい!」

小狼 「焼き肉食べながら花火見物か…」

神尾 「リラックスしてていいじゃん。去年、この花火大会見に行ったけど、 ずっと上向いてて首痛くなったからな〜。」

寺田 「おっ、みんな来てたのか。」

千春 「あっ!寺田先生!」

振り向くと、学校から帰ってきた寺田がいた。

利佳 「お帰りなさい。着替えたらすぐ来てね。」

寺田 「もう全員そろってるのか?」

利佳 「あと山崎君と奈緒子ちゃんがまだ〜。 奈緒子ちゃんは 電話あったよ。 もうすぐ着くって。」

その後、奈緒子と山崎も到着し、皆は花火を待ちながら、バーベキューを していた。 しかし、西の空には怪しい雲陰が…

そして花火大会1時間前… 雷とともに雨粒が地に刺さるいきおいで落ちてきた。

さくら 「(小狼にしがみついて) ほえ〜小狼君、怖いよー!」

小狼 「(真っ赤な顔) おい…」

山崎 「いつになってもやっぱり初々しいね、李君と木之本さん。」

千春 「感心してなくていいから、片づけるの手伝ってよ!」

雨は勢いは良かったが、30分ほどするとやんでしまった。

小百合 「ねぇ、あっちに虹が出てる!」

小百合が指さした方向を見ると、暗い雨雲の手前に、うっすらとだが、 虹が架かっているのが見えた。

さくら 「虹、きれいだね。」

小狼 「ああ。」

山本 「やっぱいーよな、あの二人。」

神尾 「おい、見とれてねーで手伝え。」

原 「せわしいな、またバーベキュー出すのかよ。」

有希恵 「いらないんなら手伝わなくていいよ。 ねぇ? 利佳ちゃん?」

利佳 「そ、そうね…」

そして18:30、花火大会が始まった。今年は1万2000発の花火が 上がるという。 ある者はビールを飲みながら 「玉屋ー!」 と叫んだり、 ある者は真実っぽい嘘をつく彼につっこみを入れたり、またある者は、 怪談話で友人と盛り上がったり、またある者は、彼女がもたれかかって、 花火を見る余裕すらない緊張を味わったりしている。 そして、やはりこの人は…

知世 「やはり、さくらちゃんは、超絶可愛いですわ〜!」

美紀 「ビデオカメラ持ってるけど… っていうか李君とさくらちゃん 撮ってるし…」

小百合 「…不思議な人だよね。大道寺さんって。 独特のオーラを 出してるというか…」

その 「独特のオーラ」 を出した人物は、そんなささやきなど気にする 事もなく撮影を続けていた。 そして、フィナーレの巨大花火百連発に さしかかった所で、さくらがふと呟いた。

さくら 「小狼君、そういえば香港でも花火上がるんだよね?」

小狼 「ああ、春節の頃とかな。」

さくら 「そっか…」

小狼「どうした?」

さくら「…あのさ、今度は… その… 二人きりで… 香港の花火が見たいな… って。」

小狼 「えっ…」

二人きりで二人きりで二人きりで二人きりで二人きりで………

「二人きりで」の部分だけが小狼の頭の中で繰り返し流れている。 そして、 気持ちが高ぶっている小狼の口から出た言葉は…、

小狼 「さくら、二人で香港に行こう!!」

寺田 「何だよ、李、お前、木之本と逃避行でもするつもりか?」

原 「それか、実家に紹介しに行くのか?」

奈緒子 「まさか、香港に行って結婚するつもりなの?」

山崎 「向こうに行けば、結婚できる年齢だしね。」 (←本当の話)

千春 「山崎君、それ、本当なの?」

小狼 「………え?」

一瞬おいて、彼の耳にいくつもの声が飛び込んできた。 しかし、彼には何が 起こったか (というか、自分が何を言ったのか) 理解できなかった。 いつの間にか 席を離れていたさくらを見ると、「ほえ〜 (汗)」 と、顔を真っ赤にし、 俯いていた。 小狼は悟った。 今、己が言ったであろう言葉は、その場に 居合わせた人物全員に丸聞こえだったらしいという事を。

その数十秒後、赤面した小狼の頭から、立ちこめんばかりの湯気が昇った事や、 しばらくの間、テラスに微妙な空気が流れた事は言うまでもない。 約1名、 カメラを片手に嬉々としていた人物がいた事もである。

知世 「さくらちゃんと李君は、史上最高のカップルですわね。」



追伸

さくら 「ほんとに連れて行ってくれるの?」

小狼 「………ああ。」
(あんな大声で言っちゃあ、取り消せない…。)


あとがき

本当は全く違うストーリーを構想してたんですが、遅れに遅れてこんな感じに なりました。 しかし、構想が二転三転して、いざ完成してみると、もう9月…orz。 次回は、知世バースデー記念ものを書こうと思っています。 しかし、もう誕生日 (9月3日) は過ぎてます………

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