ボールド体 は、話しているキャラクタの名前。
イタリック体は 思っていること。
インデントしていない文章はト書きです。
作者: MiROiR
ノエル | ここはどこ...? |
ノエルの目の前には、見たことあるようなないような塔が建っている。 周りに 人気 (ひとけ) がまったくない。 | |
ノエル | 誰もいない... |
ふと見ると、その塔の上に誰かがたたずんでいる。 黒いマントを 着ているのだろうか、人影があるのはわかるがはっきりしない。 | |
ノエル | あなたは、誰...? |
その時、塔の上の黒い人物は右手を掲げたと思うと、それを 振り下ろした。 | |
ノエル | ひゃああっ!! |
ノエルは、突然黒い布をかぶせられたような感覚に襲われる。 | |
ノエル | 真っ暗... 何も見えない... |
その時、塔の上の人物が何か言っているのが聞き取れたが、 はっきりしない声だったので何を言っているのかまでは聞き取れなかった。 | |
ノエル | どうしたらいいの? |
声 | ノエル... ノエル... |
ノエル | ... |
舞麗 | ノエル... |
ノエル | 舞麗...? |
ノエルは目を覚ました。 ここは舞麗の家の2階である。 | |
舞麗 | ノエル... もう大丈夫? |
ノエル | 大丈... いたた... |
舞麗 | ほらノエル、無茶しちゃだめだよ。 |
ノエル | ... |
舞麗 | ... |
しばらくの沈黙ののち、ノエルが口を開いた。 | |
ノエル | 変な夢を... 見た... |
舞麗 | え...? |
そのとき、呼び鈴が鳴った。 舞麗が出てみると、そこにはさくらと 小狼がいた。 | |
舞麗 | あ、さくらさん。 お帰りなさい。 さあ、入って。 |
さくらと小狼は部屋を借りた。 テーブルをセットする。 | |
小狼 | さくら、準備はいいな? |
さくら | うん。 |
さくらはカードをよく混ぜた後並べ、呪文を詠唱する。 一枚目のカードは... | |
さくら | 「闇」...? |
さくら・小狼 | 「闇」? 世界が闇に... オムニテネブリアのことか!? |
さくらは2枚目のカードをめくってみる。 | |
さくら | 「幻」? |
このカードでは何のことかわからない。 でも、「この世に偶然は ないの。 あるのは必然だけ」 という歌帆の言葉が脳裏によぎる。 | |
さくら | どんな意味があるんだろう... |
まだわからないので3枚目、4枚目とカードをめくる。 | |
さくら | 「双」、「波」 |
小狼 | ... |
さくら | ... |
さらに、5枚目、6枚目、7枚目とカードをめくる。 | |
さくら |
「歌」、「夢」、「甘」。 このカードに鍵があるのかな? それとも次? |
8枚目、9枚目、10枚目とカードをめくると... | |
さくら |
「灯」、「力」、「希望」... うん、絶対、大丈夫だよ! |
さくらは何か分かったらしい。 するとすぐにカードを片付け、 外に飛び出していった。 あわててそれを小狼が追う。 | |
小狼 | おい、さくら! 何かあったのか?! |
さくら | うん! いい考えが浮かんだの! |
小狼 | おい! ちょっと待て! 落ち着いて、気配を正確に察知するんだ! |
するとさくらは立ち止まり、気配を察知しようとした。 | |
さくら | ... |
さくらと小狼は、元いた部屋に戻ることにした。 | |
その頃の舞麗とノエルは、2階の部屋にいた。 ノエルはベッドで 寝ているが、舞麗は机で何かを始めようとしていた。 ノエルは 目を覚ますと、舞麗が机で何かしようとしているのを見た。 机には 紙やすずりが置かれ、舞麗は筆を持っていた。 | |
舞麗 | えっと、ノエルの誕生日は確か12月の...22日だったよね。 |
そう言いながら舞麗は何か書いていく。 | |
舞麗 | 朴 ノエル... っと。 ノエル。 |
ノエル | ん? |
舞麗 | 好きな色は何だっけ? |
ノエル | 紫... |
そう言いながら舞麗はまた何か書いていく。 | |
舞麗 | じゃあ、好きな花は? |
舞麗はこんな質問を何度か繰り返す。 そののちに舞麗の紙は、上端に ノエルの生年月日、下端に今日の日付が書かれ、紙の真ん中には10字詰め10行、 合計100文字のハングル文字が書かれているという状態になった。 これは 舞麗が友達の劉仙城 (ユ・ソンソン) から 教わったという占いで、適当な質問をしていって、答えの合計が100字に なるまで書き続けて、その文字盤からその日の日付と生年月日とで 決まる位置の文字で占うというものだそうだ。 ただ、すべてを インスピレーションだけで行うから結構難しいという。 しかし、 日本語で質問して日本語で答えが返ってきているのに、文字盤には 韓国語で書かれている。 舞麗によると、韓国語で行うのが ベストだからだそうだ。 だが、彼女は日本語を常用してきたので、 韓国語の単語を思い出しながらの作業だったようだが。 | |
舞麗 | えっと、この行の... ここね。 |
舞麗は文字盤の96番目の文字を指差した。 | |
舞麗 | ...! |
舞麗は何かわかったらしい。 | |
舞麗 | 行くよ、ノエル! 時間がないの! |
そういうと舞麗はノエルを連れて外に出て行った。 | |
さくら | ねえケロちゃん、オムニテネブリアのこと、何か知ってるの? |
ケロ | んー、確かクロウがそないな事言うとったかな... せやけどわいが創られる前の話やさかいようわからへんのが事情や。 |
小狼 | クロウリードが... オムニテネブリアと関わったことが あるというのか?! |
ケロ | それがやなー、クロウもわいには そのオムニなんたらっちゅうやつのことはあんまり話してくれへんかった。 |
さくら | そうなの... |
ケロ | それをわいらで見つけなあかんのや。 |
舞麗とノエルは走る。 地下鉄を乗り換えるために難波で降りると、 千日前線のホームで知世とメイリン、そして藤隆に遭遇した。 | |
舞麗 | あ! 大道寺さん! |
知世 | ちょうどよいところでしたわ。 今から、舞麗さんの家に戻ろうかと思っていましたの。 |
舞麗 | うん、上がってて。木之本さんもいるから。 ところでノエル、 |
ノエル | え? |
舞麗 | どっちに乗り換えるか、わかるね? |
ノエル | えっ... と、四つ橋線? |
舞麗 | あのね、御堂筋線に乗り換えるの! オムニテネブリアは多分そっちに 現れるんだから! |
藤隆 | オムニテネブリア... 確か昔、古文書で見たことがあったような。 |
舞麗 | 知ってるんですか? |
藤隆はオムニテネブリアという言葉にピンと来たらしい。 | |
藤隆 | 確かあれはギリシア語の史料だったかな。 いや、ラテン語だ。 間違いない。 |
藤隆は何か思い出したようだ。 さすがは考古学者である。 史料に 書かれていたことを思い出しながら言う。 | |
藤隆 | 『オムニテネブリア、それは1000年に1度降臨するという大魔王、 その時世界は、闇に包まれる。』 |
ノエル | ... |
メイリン | ... |
藤隆 | 『オムニテネブリア降臨せし時、勇者現る。 勇者はそれを封印し、現人神となる。』 |
舞麗 | ... |
知世 | ... |
藤隆 | 『されどその犠牲数知れず。 民は逃げ惑えど、逃げること能 (あた) わず。 オムニテネブリアと対峙せんとすれども、力に天地の差あり。』 |
メイリン | ... |
舞麗 | ... |
藤隆 | とまあ、そんな伝説が古代ローマか、のちのヨーロッパにでも あったのでしょう。 ただ... |
舞麗 | ただ? |
藤隆 | 古代ローマにこの伝説があったとすれば、シルクロードを通って漢に... つまり中国に伝わった可能性が高い。 |
メイリン | ということは... |
藤隆 | 日本や朝鮮にこの伝説が伝わっていても不思議ではないということです。 |
知世 | ... |
藤隆 | 古文書をもとに計算してみたことがあるんです。 次にオムニテネブリアが降臨するであろう大体の日にちを。 |
舞麗 | それで? |
藤隆 | それが... 今日になるんですよ。 |
メイリン | ええっ!? |
ノエル | ... |
藤隆 | でも心配しないでください。 きっとオムニテネブリアを 封印する勇者は現れます。 古文書にも、そう書いてありましたし。 |
その時。 | |
駅の放送 | ...に到着の電車は... |
藤隆 | あ、もう電車が来ましたね。 私達はもう行かなければなりませんが、 がんばってください。 |
電車が来たので、知世達は去っていった。 |