はじめに

このファンフィックは脚本形式です。 これは、私 Yuki Neco が書いた番外編で、テレビの一話分の長さくらいあります。 舞台は、さくらカード編の真ん中あたりと思ってください。 えっと... ちょっとエリオルをヘンに書きすぎたかも... エリオルって好きなキャラなんですけどね。

ボールド体 は、話しているキャラクタの名前。
イタリック体は 思っていること。
インデントしていない文章はト書きです。


さくらと大きなお人形さんの大空襲

原文: Sakura and an Air Raid by a Big Doll Squadron
作者: Yuki Neco
翻訳: Yuki Neco


昼休み、さくらたちはお弁当を食べている。 食べ終わると、利佳はカバンから裁縫道具を取り出し、 ぬいぐるみを作り始める。
さくら わぁ、利佳ちゃんお人形さんつくってんの? ホントにお裁縫上手だね。
知世 本当にすばらしいですわ。
利佳 そんなことないわよ。
奈緒子 でも、これ誰かに似てるような...
利佳 [ぽっ]
山崎 人形ってね、昔は男の人の持ち物だったんだよ。
千春 また出た...
山崎 昔の人形はね、人間そっくりで、人間と同じ大きさだったんだ。
さくら どうしてそんなに大きかったの?
山崎 いい質問だね。 極寒の大陸に長い間行く冒険家たちがね、 奥さんや恋人たちがいなくて寂しいから、代わりに人形を連れて行ったんだ。
知世 奥さんの代わりに?
山崎 うん。 その人形には、奥さんや恋人を思い出させるための いい感じの仕組みがあってね、 そのいい感じの仕組みを使った 冒険家は、それはそれはいい感じになったんだって。 ところが、ある冒険家はそのいい感じの虜になっちゃって、 冒険してない時も、人形と一緒にいるようになったから、 恋人が怒っちゃって...
千春 ウソもそのくらいにしないとひどいわよ。
千春は山崎を引きずっていく。
さくら え〜っ、ウソだったのぉ?
知世 うふふ、今の話はダッ○ワイ○ですわね。
さくら ほえ? 大きなお人形さんのことを○ッチ○イフっていうの?
知世 あ、そういうわけじゃないんですけど...
ちょうどその時チャイムが鳴る。
利佳 みんな、そろそろ行かないと算数の授業が。
みんなは走って教室に向かう。
家に帰ったさくらは、部屋でケロと話している。
さくら お小遣いも貯まったし、週末、デパートにお洋服買いに行くの。
ケロ 無駄遣いもせんと、ためたんか。 えらいなぁ。
さくら かわいいお洋服があるの。 ダッ○ワイ○さんが着てるのが すごいかわいくって。
ケロ そうか。 ...って、なに?!
きょうびのデパートは、○ッチ○フなんか置いとるんかいな。 えらい世の中やで。
さくら なに言ってんの? ショーウィンドウにいっぱい置いてるじゃない。
ケロ それは、マネキンや! いったいどこでそんな言葉覚えてきたんや?! ファンが泣くで。
さくら ちょっと待ってよ。 知世ちゃんが、大きなお人形さんのことを ダッ○ワ○フって呼ぶって言ってたよ。
ケロ それは、ちょっと違うで。
さくら どう違うの?
ケロ それはな、中に空気を吹き込んで使うんやけど... ってなに言わせるんや?! [さくらの頭をたたく]
さくら いたいよ! ホントはケロちゃん、知らないんでしょ。 いいもん、お父さんに訊いてくる。
ケロ それはあかんで!
さくら お父さん、大学の先生だから何でも知ってるもん!
さくらは部屋から出て、ドアを閉める
ケロ 待たんかい! あかん...

居間に行くと、藤隆がクラシック曲を聴いている。
さくら お父さん、ダッ○ワイ○とマネキンってどう違うの?!
藤隆 さくらさん... なにを唐突に。 [眼鏡がズレる]
さくら 知世ちゃんが、大きいお人形さんのことを○ッチ○イフって 言ってたんだけど、別のお友達が、それは違うというの。
藤隆 知世さんですか... さすが、園美さんの娘だ。
さくら ほえ?
藤隆 それは、難しいですね...
さくら 難しいことなの?
そこに、桃矢が帰ってくる。
桃矢 ただいま。
な、なんだ、この不健全な空気は...?
さくら あ、お兄ちゃん。 いまね、お父さんにダッ○ワ○フのこと訊いてたの。
桃矢 げ、父さん...
藤隆 言葉を外で聞いてきたようです。 本当のことを言うべきかどうか...
桃矢 それはまずいな。 さくらにはまだ早すぎる。
藤隆 そうですね。
さくら どうしたの?
藤隆 それは、難しいことですよ。 そ、そう。 それは大学で教えることなんですよ。 去年、大学で○ッチ○イフのテストした時には、 5人しか合格しなかったんですよ。
さくら なんだ、そうなんだ。
桃矢 ふぅ...
さくら じゃあ、さくら、一生懸命勉強して、ダッ○ワイ○のことが わかるようになりたい。
藤隆 え...
さくらさん、そう言うことは人前で言わない方が...
さくら どうして?
桃矢 能ある鷹は爪を隠すってことだ。

ちょうどその時、柊沢邸では、エリオルは椅子に座って木之本家の団らんを、 鏡に映して、覗いている。
エリオル くっくっく、苦労してますね。 さくらさんのお父さんの機転で、なんとか、さくらさんがあの言葉を 知ってしまうのは免れ、さくらさんも勉学にいそしみそうだ。 でも、つじつま合わせも大変ですね。
スッピー エリオル、さっきから何をブツブツ言ってるんです?
エリオル スピネルか。クロウカードの主が、とんでもない言葉を知ってしまって、 今にも問題を起こしそうなんだよ。
スッピー 何を知ってしまったんです。
エリオル ダッ○ワ○フだ。
スッピー 別にいいではありませんか。多少、知るのが早いかもしれませんが。
エリオル でも、さくらさんは意味を勘違いしている。あのままでは、いずれ、 人前で「○ッチ○イ○博士になりたい」なんて言いかねない。
スッピー それはまずいですね。[笑いを堪える]
奈久留 エリオル, スッピー、その「ダッ○ワ○フ」ってな〜に?
エリオル ルビー・ムーン。おまえもいたのか?
奈久留 ねぇ〜、それってなぁ〜にぃ?
スッピー 知ってるくせに...
奈久留 え〜っ、スッピー、あたし知らないの〜!
スッピー 誰がスッピーです?!
奈久留 教えてよ、スッピー。あたし、そんなエッチなこと知らないんだも〜ん!
スッピー やっぱり知ってるじゃないですか...
エリオル 二人とも、しばらく遊んでろ。わたしは出かけてくる。

夜9時前, エリオルは星篠高校の校庭の木の枝に立っている。
エリオル 純真なさくらさんに、あんな言葉を吹き込むなんて、 大道寺さんも困ったものだな。お兄さんも気が気でないだろう。
エリオルは時計を見る。
エリオル ふ、そろそろ時間だな。さて...
スピネル ここにいましたか、エリオル。
エリオル スピネルか、おどかすな。
スピネル どうしたんです。一人で、出かけるなんて。
エリオル スピネル、静かに。
めがねの奥でエリオルの目が光る。
エリオル ふふふ、この頃、星篠高校の女子ソフトボール部は こんな時間まで練習しているのだよ。夜になると、彼女らも 油断して、以外と簡単に更衣室を覗けたりするんだ。
スピネル 出かけた目的はこれだったんですね。
エリオル 昼間は、真面目な小学生を演じなければならない身としては、 結構大変なのだよ。お、最近の高校生はよく発育してるな。くっくっく。
スピネル で、なんでこんな遅くまで練習してるのでしょう?
エリオル 高校ソフトボール大会が近づいているらしい。
ルビー 近づいている? ♪水平線の一点で交わる山と海 近づいてい〜る (Cardcaptors の挿入歌です ^^;)
エリオル 歌うな、気づかれる!
ルビー ったく、二人してなに怪しい会話してるのよ?
エリオル おまえもいたのか? 二人して、わたしのささやかな趣味を邪魔する のだけはやめてくれよ。
スピネル 心配無用。そんなもの、わたしにとっては空気みたいなもの。
エリオル ふっ、そうか。ルビー、おまえにもわたしの気持ちはわからない だろうな。
ルビー エリオルが男だから... ってこと? そんなのわからないわ。 わたし、別に人間じゃないし、性別なんて関係ないわ。
エリオル 便利なのか、不便なのか、体が子供で心はオトナ... まあ、それも、 前世からの望みを叶えるための手段にすぎないが。
スピネル って、エリオル。なぜ、「オトナ」だけがカタカナなんですか?
エリオル 細かいことは気にしないでいい。
おぉ、あの子、おとなしそうな顔して、身体はセクシーダイナマイト...
スピネル そんなに、興味があるのなら、魔力で時間を止めて、堂々と見れば いいのでは?
エリオル いつバレるかわからないスリルがいいのだよ。このドキドキは、 どんな魔力にも勝る。
スピネル ... (汗)
ルビー あ〜あ、せっかく、あたしたちも真の姿に戻って出て来たというのに、 覗きだなんて。TOKIO のテレビ見てればよかった。 長瀬くんと太一くん大好きなのに...

その時、さくらは部屋で一生懸命勉強している。
ケロ なんや、さくら、よお頑張るやないか。
さくら うん、お父さんが言ってたの。勉強して頑張れば、大学に入れて、 いろんなことがわかるようになって、あのダッ○ワ○フのことだって。
ケロ げっ。さくら〜、それは...
さくら でもね、あたし、ケロちゃんのこと少し見直しちゃった。 ケロちゃんが○ッチ○イ○のこと知ってるんだもん。
ケロ そ、そうか〜? あはははは...
どえらいことやで〜
突然、さくらは息を飲む。
さくら ケロちゃん、今、クロウさんの気配が。
ケロ 確かにクロウの気配や。
さくら でも、いつもの気配と違う。なんか、近寄っちゃいけないような 気がするの。
ケロ せやな、今回の気配は、やたらと油ぎっとるで。
さくら なんとなく、危険な感じが...
ケロ さくらの魔力、つよ〜なっとるな... というより、女の勘か...
さくら でも... クロウさんの気配がするってことは、何か不思議なことが 起こるってことだよね。はうう、こんなコワい気配って初めてだよぉ。

さくらとケロは、気配をたどって、星篠高校のグラウンドに着いた。 当然、知世と小狼とユエもいる。
知世 今日は、メルヘンチックなさくらちゃんでいきましょう。
さくらは、大きな布を三角形に折り畳んだ帽子をがぶり、胸元がレースで 編み合わされた白いブラウスの上から、ワインレッドのベストを羽織っている。 スカートもワインレッドで丈は長く、ふわっと広がるような感じで、柔らかく 仕上げられており、木靴のような靴を履いている。(本当は、動きやすくする ため、合成繊維製。)
さくら はうう... なんか、チューリップ畑と風車が似合いそうだね。
知世 さすが、さくらちゃん! お察しの通り、オランダ風、ダッチさくら ちゃんですわ。かわいさ炸裂ですわ。ね、李くん。
小狼 べ、別に... (真っ赤になる)
さくら あのね、今日のクロウさんの気配ね... すごくコワくって、 こんな格好してると、もっと危険な予感もするんだけど...
ユエ ケルベロス、この気配は...
ケロ どっちかというと、本来のクロウの気配や。こんな気配を出した直後、 クロウはカードを創ることがあったな。
さくら ケロちゃん、ユエさん、気配が弱くなってきた。
ケロ はよ、見つけるんや!
さくらたちは、気配がする方向へ走っていく。
エリオル 今日はこれでおしまいですね。ふふふ、いいものを見せてもらいま した。まったく、やめられませんね、これは。
スピネル 大変です、エリオル。
エリオル ん? どうした、スピネル?
下を見ると、エリオルたちがひそむ樹に向かって、さくらたちが走ってくる。
エリオル なぜ、さくらさんたちが?
スピネル 魔力の気配が...
エリオル し、しまった。それで、さくらさんたちが!
ルビー ったく、エリオルったら、のぞきに夢中になってるもんだから、気配を 消すの忘れて、いやらしい魔力がジワジワにじみ出てたわよ。
エリオル いやらしい魔力と言うな。今、わたしたちの正体がばれると、まずい。
ルビー 逃げるの?
エリオル もう手遅れだ。予定にはなかったが、少し遊んでいきましょうか。
エリオルは魔法の杖を掲げ、ゆっくりと振る。近づいてくるさくらたちに、 ソフトボールが雨のように降り注ぐ。
小狼 うわぁ! なんだ!?
知世 ソフトボールの雨ですわ。
さくら な、なんで?
空を見ると、数十体の身長150〜160センチの女の子の人形が、空を飛び、O型に 開けた口からソフトボールを吐き出して、さくらたちを襲っている。
さくら ほえええ! なんなの?! 大きなお人形が!! あれって、マネキン? それとも...
知世 あれはダッ○ワ○フですわ!!
さくら なぜ、わかるの?!
知世 婦警さんの格好して、口を開けてるからですわ!
ケロ んなこと言うてる場合やないやろ! はよなんとかするんや!
小狼 はぁ... は! は! は!
小狼は拳法でソフトボールをはじき返すが、すぐに限界に達する。
小狼 くそ... 数が多すぎて...
樹の上では、エリオルたちがさくらの様子をうかがっている。
エリオル 危ないところでした。ちょうどいい。さくらさん, どうしますか?
スピネル いくらクールを装っても、ダッ○ワ○フで攻撃とは、女子ソフト ボール部員の着替えを覗いたヨコシマな心が消えてないですね。
ルビー しかも、なぜ婦警さんなのよ?
エリオル わたしの趣味だ。ほっといてくれ。
小狼は剣を取り出し、魔法を使う。
小狼 雷帝招来! はあっ!
空飛ぶダッ○ワ○フは、小狼の魔法で、いったんばらけるが、すぐに攻撃を 再開する。
さくら いたた... 痛いよう!
知世 大変なことになってきましたわ!
ユエは翼を広げて、降り注ぐソフトボールから、さくらを守る。
さくら ありがとうユエさん。でも、ユエさん、元気がないみたい。
ユエ 大丈夫だ。それより、ケルベロス、クロウの気配が戦闘態勢に 入ってきたようだ。
ケルベロス 確かに... この空飛ぶダッ○ワ○フはどないすればいいんや。
ケロは翼を広げて、知世を守る。
知世 ケロちゃん、ありがとうございます。 ボールが当たってレンズが割れたら、超絶かわいいさくらちゃんの勇姿を 撮影できなくなるところでした。
さくら はううう... [コケる]
樹の上では、余裕ありげにエリオルがほくそ笑んでいる。
エリオル ユエも限界が近づいてきたか。もうフラフラだ。
ルビー ○ッチ○イ○に倒されるユエ... 傑作だわ!
ユエに守られながら、さくらは考えている。
さくら ものが降ってきて、埋まりそうになって... 前にそんなことが...
小狼 数が多すぎる。
さくら そうだ! イレーズのカードで、ダッ○ワ○フを全部消せば!
ケロ 他のカードつこたほうがいい! 考えるんや!
さくら ダメなの?
ケロ ダメやないが、イレーズは既にさくらカードに変換しとる。 せっかくのチャンスや! まだ変換しとらんカードを使うんや!
小狼 他のカードでうまくいくのか?
ケロ よおわからんが、まだ変換しとらんカードでうまくいく気がする。
知世 さくらちゃん! アローのカードならどうでしょうか?
ユエ 人形にアローのカードが効くのか?
知世 ダッ○ワ○フは普通の人形ではありませんわ。うまくいくような 気がするんです。
さくら 知世ちゃんがそこまで言うなら、きっと大丈夫だよ。
さくらはアローのカードを取り出し放り投げる。
さくら クロウの創りしカードよ、古き姿を捨て生まれ変われ。 新たな主、さくらの名のもとに。アロー。
アローのカードは数十本の矢となり、ダッ○ワ○フに襲いかかる。 射られた○ッチ○イ○は、空気が抜ける風船のように、四方八方へ飛ぶ。 その中の数体がエリオルたちの方に飛んでくる。
エリオル や、やばい。ここは退散だ。
エリオルたちが逃げると、ダッ○ワ○フやソフトボールは消えてしまう。
さくら ユエさん、大丈夫。
ユエ 心配はいらん。
小狼 さくら、よくやった。
さくら 知世ちゃんが、教えてくれたからだよ。
知世 だって、ダッ○ワ○フですもの。
さくら さすが知世ちゃん。さくらもね、一生懸命勉強して、○ッチ○イ○の ことがわかるようになりたいの。
知世 やっぱり、さくらちゃんには、早すぎたのですね。 お願いですから、人前でダッ○ワ○フなんて言わない方が...
さくら そうだ、お父さんとお兄ちゃんも同じこと言ってたんだ。
知世 そうでしょうとも。
さくら 能ある鷹は爪を隠すって言ってた。
知世 え...? [言葉を失う]
小狼 なんの話だ?
知世 とにかく、さくらちゃんにあるまじき言葉ですわ。
さくら ほえ? やっぱり、大学生にならないとダメかな?
知世 多分、大学生になる前におわかりになるかとは思いますが、 さくらちゃんのファンは、それを望んでいないかもしれませんわ。
さくら なんなの? ますます、わかんなくなっちゃったよぉ!
知世 なんにせよ、ダッ○ワ○フのことがわかれば、喋りたくなくなりますわ。 きっと。
小狼 なんなんだ? 大道寺、いったい、なんの話だ?
ユエ クロウの血を引くものよ、そんなことをご婦人に訊いてはいけない。
ケロ なんや、ユエも知っとったんかい。

そのころ、柊沢邸では
エリオル 果たして、さくらさんが、ダッ○ワ○フの意味を知ってしまうのは、 いつになるんでしょうね?
奈久留 今日のエリオル、なんか危ないわね。
エリオル しかし、クロウ・リードの魔法をアローのカードででかわし、 逆にわたしを攻撃するとは、さすが、さくらさん。
スピネル のぞきに夢中になってるあまり、敵の接近に気づかず、 しかも自分がけしかけたダッ○ワ○フに襲われるなんて...
奈久留 エリオル、ダサダサ〜。
エリオル 性欲のない奴らに何がわかる。
奈久留 今日のエリオル、なんか、援助交際するオヤジみたい。


とりあえず 完

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