作者まえがき

私はCCSの舞台である 「友枝町」 を東京・練馬区の大泉学園に 置きました (以前親戚が住んでた時によく行ったことがあり、 とても思い入れが大きいので)。 なお、実在する地名などが多々出て きますが、原作とは一切関係はありません。 また、登場人物の 出身地などは自己設定です。

なお、このフィックは、今年 (2004年) 6月下旬の話という 設定です。 (小学6年生という設定の劇場版第二弾は日本では2000年の 夏だったので。)

登場人物

寺田 良幸 (てらだ よしゆき) 友枝小学校教師。 元教え子と結婚することになった。 芭蕉の句で有名な 中尊寺がある岩手県平泉町出身。東京・月島に住む。
佐々木 利佳 (ささき りか) 寺田の結婚相手であり、元教え子でもある、高校1年生。 寺田と出会う数週間前に父親を亡くす。 友枝在住。
木之本 桜 (きのもと さくら) 利佳の元同級生で、仲の良い友達。魔力のあるカード 「さくらカード」 の使い手だが、その秘密を知っているのは ごくわずか。 利佳に同じく友枝出身・在住。 小狼のガールフレンド。 利佳と同じ星條高校に通う。
大道寺 知世 (だいどうじ ともよ) 小学校入学と同時に友枝にきた。 桜に同じく、元同級生の友達。 母は大手玩具メーカー 「(株) 大道寺コーポレーション」 の社長。
柳沢 奈緒子 (やなぎさわ なおこ) 桜たちに同じく、元同級生の友達。大の怪談好き。 友枝出身だが、 中学卒業後、神奈川県相模原市へ引っ越した。
三原 千春 (みはら ちはる) 桜たちに同じく、元同級生の友達。 稚園時代から後述の 山崎貴史のガールフレンド。 友枝出身・在住。
山崎 貴史 (やまざき たかし) 桜たちに同じく、元同級生の友達。 千春のボーイフレンド。 中学2年の時に、家の事情で母親の実家がある千葉県鎌ヶ谷市に引っ越す。
李 小狼 (り しゃおらん) 香港出身。 桜たちに同じく、元同級生の友達で、桜のボーイフレンド。 友枝中央公園前のマンション 「スカイメゾン友枝学園北町パークサイド」 に、 お手伝いの偉望 (通称ウェイさん) と二人で住む。
その他 寺田・佐々木両家の両親および親戚、木之本・大道寺 (天宮) 一家と 雪兎とケルベロス、元同級生など大勢の友達、友枝小の先生など。

旅立ち ∼ 16歳のJune bride ∼

作: 京成特急for佐倉

第1章 6月25日 〜結婚式前々日〜

雨が降るという予報は見事にはずれ、一日中快晴で気温も32度まで 上がった。 夕方になると暑さの方は少し和らいだが、それでもまだじめじめとした 空気が体にまとわりつく。 小学校教師の寺田良幸は、自分の花嫁を迎えに行くべく、 東京から北西へ向かう川越街道を車で走っていた。 花嫁... そう、彼は明後日 結婚するのだ。 その花嫁とは、彼の元教え子で、今年高校生になったばかりの 16歳の少女、佐々木利佳である。 彼は36歳だから、ちょうど20歳の 差がある。 初めてであってからもう7年、恋人という関係になってから 6年ぐらいにもなる。 この結婚には周りの驚きも大きかった。

彼は、赤塚新町三丁目という交差点で左に曲がり、光が丘の方向へ 向かった。 彼女の祖父は病を患って東京・練馬区の光が丘にある病院に 入院していた。 数十分程前、コンビニに寄ったついでに彼女の家に 電話したところ、この病院に祖父のお見舞いに行ったと、彼女の母親が 言っていたのだ。 病院の駐車場が満車だったので、向かい側の公園の 駐車場に車を移動させようとしたところ、彼女が病院から 出てきた。 クラクションを鳴らしたら気づいたようで、こちらにきて、 車に乗り込んだ。

寺田「お母さんから電話があったのかい?」

利佳「うん、それにそろそろ帰らなきゃなぁって思ってたから。」

寺田「荷物は家だよね。ホテルの夕食は7時半くらいだから、荷物積んだら早いとこ出発しよう。お義母さん達にもご挨拶しなきゃ。」

寺田は車を友枝町にある利佳の家へと走らせた。 病院から利佳のうちまで 15分ぐらいで着いた。 家に着くと、彼女の母親と兄が迎えた。 彼女の姉は 偶然にも教育実習校で教えたことがあり、寺田も仲が良かった。

利佳の姉・夏実 「先生じゃん!いらっしゃーい。 あがって〜。」

寺田 「ありがとう、でもいいよ。 荷物乗せたらすぐ出発するから。」

利佳の母・佳奈子 「夏実! 普通に呼びなさいって何度も言ってるじゃない。 ごめんなさい。 前からずっと言ってるんだけど、どうも直らなくて。 しばらくは許してね。」

先生か...」 苦笑いでごまかした寺田であった。


夕方の友枝学園駅。女子高生4人と男子高生2人が、駅前から出る路線バスに 乗り込んだ。 バスが出るこの駅前も、さくらがカードを集め出し、そして 小狼がこの街にやってきた頃からするととてつもない変化を遂げ、 南口に至っては、区民ホールが入った高層マンションが建ち、 駅前デッキも完成したため、あのころと同じ街に住んでいるとは 信じがたく思えるほどになってしまった。

さくら 「今日はみんなで買い物につきあってくれてありがとね。」

知世 「いいえ、そんなことありませんわ。」

奈緒子 「そうだよ。 一人で夕ご飯作るんでしょ? 大変だもん。」

山崎 「そういえばみんなはどうするの?」

千春 「みんなでさくらちゃんの家で夕ご飯食べたら、相模原の奈緒子ちゃんの 家に行って泊まるんだ。 山崎くんと李くんはどうすんの? 明日には あっち (結婚式をやる場所) に行ってクラス会に参加するんでしょ?」

小狼 「ああ、そうだけど、山崎は?」

山崎 ::割り込んで:: 「うん、今日はほかの男子と李君ちに泊まるんだ。」

さくら 「え? 小狼くんちに泊まるの?」

小狼 「ああ、そうだ... って、聞いてねえぞ、山崎! 帰るんじゃないのか?」

山崎 「あれ? 言ってなかったっけ? 先週電話したときに 「いいぞ」 って 言ってたと思うけど。」

千春 「で、誰と一緒に泊まるのよ?」

山崎 「神尾君と原君。」

神尾祐樹は5年の時の学芸会の劇 「眠れる森の美女」 で国王役だった (ちなみに 王妃役は利佳)。 もう一方の原光一はかつて利佳のことを好きだったと 言われる伝説のバスケ男だ。 小狼は家の冷蔵庫に何もないことを思い出し、 あせった。 その様子を察知してさくらが話しかけようとしたとき、 バスのアナウンス 「次は、友枝北町一丁目、友枝北町一丁目で ございます。」 降りるバス停よりも3つ手前だ。他の人がボタンを押したので、 バスはその停留所に停まった。 小狼が座席を立つと、
小狼 「山崎、悪いけど先行っててくれ。 オートロックだから 部屋番号押せば偉がでるから。」

山崎 「どうしたの? 降りるバス停ここじゃないよね?」

小狼 「買い物忘れた。 この近くのスーパーで買ってくる。」

この一言だけ残して小狼はバスを降りていった。

知世 「李君、すっかり山崎君達がとまることを忘れてらっしゃった みたいですわね。」

奈緒子 「李君、少なくとも4人分作らなきゃならないんでしょ?」

千春 「さくらちゃんも私たちの作るんだから、手伝ってあげなきゃね。」

さくら 「はうううう〜。そだったぁ〜。 みんな、ありがとー! いろいろ手伝ってくれて。」

時刻は4時15分。 7時半ぐらいには電車に乗らなければならない。


そのころ、佐々木邸では母と姉と祖母が花嫁と花婿の 見送りにでていた。

夏実 「じゃ、先生、いや良幸おじさんか。 気をつけて。」

佳奈子 「まーた間違えて。 いいかげんになさい。」

夏実 「だって〜、名前で呼ぶとなんか違和感あるんだもん。」

利佳 「じゃあ、行ってきます。 明日来るんだよね?」

佳奈子 「もちろん。東京11時の特急で行くつもりよ。」

寺田 「じゃあ迎えに行けるようだったら迎えに行きます。 それじゃあ、またあした。」

車は快調に走り出した。 15分くらいして、環八通りにでた後、利佳が つぶやいた。

利佳 「でも、なんか結婚するって実感がわかないな。」

寺田 「そうかな。 もう初めてあってから6年は経つんだもんな。」

利佳 「なんか、あっという間だったね。」

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二人が出会ったのは利佳が4年生になったときの始業式だ。 小学校教師を 目指していた寺田は高校卒業後、地元岩手から仙台に引っ越し 教育大に進学。 大学卒業後、上京して都内で公立小学校教職員試験を 受けたが失敗。 2回受けたところで公立を諦めて私立の学校を何校か 受けたところ、この友枝小学校に合格し、27歳で教師になれた。

この学校は本当に変わっていて、ローラーブレードで登下校している 生徒がいたり (一応認められているらしい)、給食と弁当を選択で きるようになってたりする。 教科ごとに教諭が変わったりするのは 中学や高校さながらだ。 とにかく、その一風変わった小学校で体育を 教えることになった。 それとともにクラス担任も受け持つことになり、 初担任のクラスは4年1組となった。 4年1組の教室に向かう途中、 廊下の曲がり角でこちらも教室へ向かおうとして小走りしていた 女の子とぶつかってしまい、女の子は転んでしまった。

寺田 「だ、大丈夫かい?」

利佳 「...は、はい。」

うつむいていた女の子の顔がこちらを向いた瞬間、彼はふつうの 子供とは違うものを感じた。 そう、その女の子こそが 利佳だったのだ。 その女の子も、彼と目線が合ったそのとき、 なくなったはずの父親の面影に似ていることに気がついた。

彼女の父親は、実は俳優の佐々木秀和で、肺ガンのため、数週間前に 他界してしまった。 告別式には何千というファンが訪れたという。 しかし、 このとき、彼女の父親が俳優の佐々木秀和であることは、親戚以外誰も 知らなかった。

寺田 「君は何組?」

利佳 「4年1組です。」

寺田 「そうか。じゃ、僕の担任するクラスだね。 よろしく。」

こうして、利佳は寺田の生徒に、寺田は利佳のいるクラスの担任に なった。 寺田は最初に利佳にあったときになぜか結婚する予定だった 地元の同級生の幼なじみを思い浮かべた。 彼女も式を挙げる3日前に 急死した。 もう2年前のことだ。

そして6月になり、友枝小恒例の学年遠足があった。 神奈川の方の動物園に 行くことになったのだが、寺田にとっては「4年生で動物園って...」 というのが 大きかった。 その頃から月島に住み始めた寺田は、電車の定期代とアパートの 家賃を払うのが精一杯で、食費などの生活費は徹底的に抑えていた。 当然、 このときの昼食もコンビニ弁当だった。 そのとき、一人の少女が 弁当箱を持ってきた。利佳である。

利佳 「あの... これ、良ければ食べてください。」

コンビニ弁当を食べるのをやめて中身をみると、のりたまがかかった ご飯や豚の生姜焼き、ポテトサラダや漬け物、果物まで入っていた。

寺田「すごいね。自分で作ったの?」

利佳 「... はい。」

顔を赤くして利佳が頷く。寺田が食べようとするや否や、
利佳「あの、弁当箱、後でバスの中で返してください。」

呼び止めようとしたものの、そのまま利佳は走り去ってしまった。 ぼーっと してても仕方がないので、食べることにした。 最初にご飯をほうばった。 「ああ、おいしい...」 と思えた。 コンビニじゃない弁当を 最後に食べたのって何時だったっけなぁ、と感慨にふけってしまう くらいに。 あまりのおいしさに涙が流れ出た。

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寺田は、環八通りから首都高湾岸線に入り、東京湾アクアラインの海ほたる パーキングエリアに車を止め、利佳と夕暮れの東京湾を眺めていた。

寺田 「ああ、それにしても、あの弁当は本当にうまかったなぁ。」

利佳 「食べながら泣いてたんでしょ?知ってるわ。 あの後、音楽の授業の時に 辻谷先生が言ってたの。 たぶんみんな知ってると思うわ。」

寺田 「何だ、知ってたのか... あーあ、明日のクラス会で からかわれるんだろうなー。 明日はフォロー頼むよ。」

利佳 「言われなくても分かってるわ。」

日がだんだん傾き、今日も東京は暮れてゆく。 彼らは完全に日が沈むまで、 ずっと海を眺めていた。


さくら 「ほええええええ!! 遅れちゃうぅ〜〜〜!!」

そのころの木之本家では、いつもの叫び声が響き渡っていた。

ケロ 「何のさわぎやねん? ん? どこ行くんや?」

寝ていたケロが起きてきた。

さくら 「利佳ちゃんの結婚式。」

ケロ 「ああ、クロウカード集めてた頃ソードに操られたお嬢ちゃんやな? せやけど、あさってとかいうてなかったか?」

さくら 「クラス会とかあるし、場所が遠いからみんなで 奈緒子ちゃんちに泊まるんだ。」

ケロ 「遠いってどこまで行くんや?」

さくら 「どこだっけ? ちょっと待って。」

招待状を見る。 式場のホテルは千葉県の天津小湊町という、房総半島の 南側にある海沿いの小さな港町にある、という説明があった。 観光名所が 結構あるらしい。

ケロ 「へー、港町っちゅうことは、魚料理とかがうまいんかなぁ。 へぇ、温泉もあるんか! あのお嬢ちゃん、ええところで式挙げよるなぁ。 なあさくら、わいも一緒に行ってええか?」

さくら 「うん、来てもいいよ。 でも絶対に見つからないようにしてね。 知世ちゃんも来るけど。」

ケロ 「よっしゃー! めっちゃ食ったるでー!!」

と言ってケロはさくらの旅行鞄の中に潜り込んだ。

さくら 「ほええええええ! 早く行かなきゃ大変だー!」

いつものようにどたばた階段を降りてくる。 そして桃矢がいつものごとく、
桃矢 「また始まったな、怪獣。」

さくら 「さくら怪獣じゃないもん! もう高校生なんだからそういう呼び方やめてよ!」

桃矢 「あーはいはい。 さっさとしないと、バス乗り遅れっぞ。 友達が待ってるんだろ。」

さくら 「分かってるよ! それでお兄ちゃんはどうすんの? お兄ちゃんも行くんでしょ?」

桃矢 「明日ユキと一緒に行く。 父さんは出張場所から直接行くって言ってた。」

さくら 「そうなの、あ、行かなきゃ。 いってきまーす!」

慌ててバス停に走り、予定通りバスに飛び乗った。 しかし、バスが渋滞で遅れ、 駅に着いてからは予定通りには行かず、次の駅で乗り換えるはずだった 急行電車 (友枝学園駅には急行は止まらない) は、さくらたちの前を むなしく通過していった。


同じ頃、小狼のマンションでは、偉、山崎、神尾、原、そして小狼の5人で 夕食を食べていた。 小狼は前に友枝町にいたときと同じマンションの 同じ部屋に住んでいた。

山崎 「それにしても李くんはすごく料理うまいね。」

原 「ああ。マジうまい! 俺これなら金払ったっていいぞ。」

神尾 「つーか李って家事全般得意だよな。」

小狼「まあな。」

偉 「昔から小狼様は何でも自分でやっておりましたから。」

それきり会話が途切れ、なんともいえない微妙な空気が漂う。 少しでも 空気をよくしようとした偉が聞いた。

偉 「あのー、今度ご結婚なさる佐々木さんて、どんな方なんですか?」

原 「結構物静かで、大人びた雰囲気の人なんです。」

神尾 「なんか劇の役者もうまかったよな。 ほら、『眠れる森の美女』、 4年の時の。」

山崎 「ああ、神尾くんが王様役だった劇かぁ。 で、李くんが お姫様役だったやつ。」

原 「あの劇はかなりうけたよな。 李のだめ演技に神尾の王様は 調子狂ってたもんな。 しかも、クライマックスで木之本が李に...」

小狼 「おい! その話はやめてくれ!! 今思い出してもすごく恥ずかしいから。」

神尾 「まあまあ、で、その劇やってて思ったんだけど、あいつ子役やって たんじゃないか? あれだけ感情の入った演技は間違いない!」(←長○秀和っぽく)

偉 「ほう... 子役、ですか?」

原 「ま、元々友枝にいたわけじゃないからな。 どっから引っ越してきたかも 全然知らないし。 ここ (友枝) にくる前のことなんて誰も知らないんじゃない?」

小狼 「そうなのか。 俺も全然知らなかった。」

その後、偉は密かに小狼に聞いてみた。

偉 「小狼様。 その、劇の時にさくらさんと何があったんですか?」

小狼 「偉、頼むから聞かないでくれ。」

一方、さくらたちはJR新宿駅に着いたところだった。 ここから小田急線に乗り換える。

奈緒子 「連絡改札で千代子姉ちゃんが待ってるんだけど...」

さくら 「ほえ? 奈緒子ちゃんてお姉ちゃんいたの?」

奈緒子 「ううん。 いとこだよ。 今24歳なの。」

千春 「へぇ〜! すごく歳離れてるんだ。 どんな人?」

そのとき、連絡改札のところで大きく手を振っている女性がいた。 奈緒子の いとこ、千代子である。 確かに奈緒子の面影に似てはいるが、眼鏡は かけていない。 奈緒子によると、コンタクトをしているらしい。

千代子 「みんな、はじめまして。 さ、早くしないと座れなくなるから ホームに行こ!」

この時間ともなると電車も混む。 彼女らが乗った20時31分発の急行 小田原行きもぎゅうぎゅう詰めの状態だった。 無論、座れるはずはない。

知世 「奈緒子ちゃんによく似てらっしゃいますわね。」

奈緒子 「そうかもね。 違うとこと言えば、眼鏡かけてないところと、 あと千代子姉ちゃんには彼氏がいるってところぐらいかな?」

千春 「でも、何で迎えに来てたの?」

奈緒子 「新宿に買い物に来てたから、そのついでなんだって。」

電車に揺られること約40分、相模大野に着いた。 そこからバスに乗る。 たった5分ちょっとで終点に着いた。 奈緒子の家は団地の中にある そのバス停から5分ほど歩いたところにある住宅街の酒屋さんで、 看板には 「リカーショップやなぎさわ」 とある。 店の裏に回り、 自宅の玄関から入る。 奈緒子の母が迎えた。

奈緒子の母・幸代 「こんばんは。どうぞあがって。」

さくら他 「こんばんは。 お世話になります。」

千代子 「母さん、私も明日行くし、今日はもう寝るわね。」

幸代 「あら、そう。でも、何で行くのよ?」

千代子 「ウェディングプランナーのあたしが行かなくてどうするのよ。 あれ? 言わなかったっけ? 寺田先生の結婚式のプラン、私の担当なのよ。」

奈緒子 「そうだよ。 結婚するって決まったときにたまたま一緒にいた お姉ちゃんに頼んだんだよ。」

幸代 「まあ、そうだったの? じゃあ、なおさら父さん連れてかなきゃ だめじゃないの。」

奈緒子 「父さん、もう寝ちゃったの?」

幸代 「そうなのよ。まあいいわ。今夜はゆっくり休みなさい。」

千代子は自室に、奈緒子もさくらたちを連れて自室に入った。 そして、10時半ぐらいにはすでに寝ようとしていた。

さくら 「でもびっくりしたよね〜。 最初に結婚するって聞いたとき。」

知世 「ええ。 でも、先生と利佳ちゃんがおつきあいしてるのは知ってましたわ。」

さくら 「ほえ? 知ってたの?」

奈緒子 「て言うか、みんな知ってたと思うよ。 さくらちゃんと李くんみたいに。」

千春 「そうだよ。 そういえば、6年の時の劇の時に山崎くんがけがして、 李くんが代役で王子様やったでしょ? あれね、山崎くんが言ってたんだけど、 ほんとはけがしてなかったんだって。」

さくら 「えっ?」

千春 「山崎くん曰く、「もう李くんと会えなかったらかわいそうだし、 二人の幸せな思い出を作ってほしいと思って。 クラスのみんなもそう 思ってるよ。 千春ちゃんもそう思うでしょ?」 だって、けがが 嘘だってこと知った時は怒ったけど、二人のこと考えたら山崎くんが やった通りでいいのかな... って思ったんだ。」

さくら 「... そうだったのかぁ。 なんかうれしい。 でも、ばれてたのは ちょっと恥ずかしいけど。 そうだ! 明日小狼くん達と一緒に行こうよ。 みんなで行けば楽しいし。」

奈緒子 「それいいね! じゃあそうしようか。 あ、でも千代子姉ちゃんの友達が 妹連れてくるんだけど、大丈夫かなぁ?」

さくら 「小狼くん達なら絶対大丈夫だよ。 じゃあ、メールで聞いてみるね。」


その頃李宅では、もう寝ようと、布団に入ったところだった4人のうち、 小狼と山崎がほぼ同時にくしゃみをした。

小狼 「誰か俺らの噂してるんじゃねえか?」

神尾 「木之本じゃん?」

原 「じゃあ何で山崎も?」

神尾 「それは知らねーなー。」

そのとき、ケータイの着信音が鳴ったが、すぐに切れた。

原 「誰んだ?」

山崎 「李くんじゃないの?」

小狼が確認すると、確かに受信メール一通と表示されていた。 さくらからだった。

あのね、今思いついたんだけど、明日私たちと一緒に行かない?
奈緒子ちゃんのお姉ちゃんのお友達も来るんだけど・・・大丈夫?

山崎 「メール誰から?」

神尾 「んなこと聞かなくても100%木之本だろ。 木之本からメール来ると 急に無口になるんだよ。」

小狼 「(無視して) さくらが明日一緒にいかねーか? って。 柳沢の姉さんの 友達も来るんだと。」

山崎 「いいんじゃない? クラス会もあるし、一緒に行こうよ。」

この意見に神尾と原もあっさり同意し、一緒に行くことになった。 一応 東京駅に8時ということになった。 こうしてやっと一日が終わった... と 思いきや、こんなところで怒ってるのがいた。

ケロ 「あー、さくらのやつ、完全にわいのこと忘れとる。 さーくらー、 明日どうなるか覚えとれやー! あー、でも腹減ってたまらん。」


続く


あとがき

実在する街とリンクさせてみました。 実際、大泉学園駅の周辺は本当に発展し、 「区民ホール (実際は「ゆめりあ」というそうです) が入った 高層マンション」 や 「駅前デッキ」 も実在します。 自分もしばらく 来ないうちに変わってしまったので圧倒されました。

これを書こうと思ったきっかけは利佳ちゃんの誕生日が6月24日だったのを 知ったときに、「ということは寺田先生と結婚できるじゃん!」というのと、 自分の誕生日が寺田先生と同じ (7月18日) という単純な理由です。

なお、このファンフィックは 3〜4章構成で計画してます。 今回は主役の2人は 登場回数が少なかったですが、次回からはたぶんぐっと多くなると 思います。 その次回では、利佳ちゃんの隠された人生が明らかになる!? かも...

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