星界の門

作者: deko

第7話: 時の交点

太陽を隔てて地球とは反対側の空間にある、ガスの噴出点から、巨大な物体が三基 現れた。 物体は、ピラミッドを鋭くしたような鋭い四角錐形状をしており、陽光に 輝いている。


双遠山付近の山野は、日が差していながら、空気は凍り付くように冷え切って いる。 そんな中を、本来なら冬眠しているはずの狸やカモシカが動いている。 彼らは 示し合わせたように、山頂に向かって移動していた。


高度通信研究所の管制室のモニターには、探査機から送られてきた映像が映し 出されている。 頭を垂れている中川博士を、グノームが問いつめている。

グノーム: 「中川君、あれは一体なんだね。君は知っているのか?」

観測員: 「物体の出現に伴う重力変動は、探査機の軌道を歪めているようです。」

科学者: 「大きい。 一体何十、何百万トンの質量を持っているのだろう。」

美佐子: 「あれは、何のためにこの世界にやってきたんでしょう。」

聡: 「懲罰だよ。」

室内の全員が一斉に注目した。 だが、高度通信研究所所長は、それ以上は話さず、 アフリカと南米のステーションを結ぶモニターに向かった。

聡: 「デイック、エルナン。 直ちに、基地を捨てて待避してくれ。 時間が 無いんだ。 彼らは、躊躇などしない。」

エルナン: 「しかし、聡。 あれは、二天文単位。 すなわち三億キロの彼方に いるんだよ。」 デイック: 「そうだよ。 そんな長距離から、私たちを見つけたとしても...」

聡: 「彼らの力からすれば、三億キロは鼻の先に等しい。 急いでくれ、18分も 前に彼らは、近接用砲台を送り込んできたんだ。」

エルナン、ディック: 「砲台?!」

室内の全員が見るモニターでは、3基の砲台が陽光を受けて、輝き始めたところだった。


天宮家山荘の玄関の扉を勢いよく開け放ち、赤いドレス姿の女の子が表に出た来た。

娘: 「うわーー! 寒い。 でも、行かなくちゃ。」

そこで女の子は見送りに出た、偉望に振り返った。

偉望: 「お嬢様。 大丈夫でしょうか?」

娘: 「大丈夫! あたしだって、それなりの魔力は持っているもの。」

偉望: 「お気をつけて」

女の子は心配げな老人の頬に唇を押しつけた。

娘: 「行ってきます! また後でね。 ネオ・フライ!」

見たところ10歳くらいにしか見えない少女が、魔法の杖にまたがって飛び去るのを、 老人は心配そうに見送った。


小狼はさくらを負ぶって、研究所内の廊下にたどり着いた。 さくらは、疲れ切っている らしく、横たえられると目を開けた。

さくら: 「ありがとう。小狼くん」

小狼: 「言わなくてもいい。 今は疲れているんだろう」

さくらの服から、血の跡は消え去っている。 だが、血以上に大事な気力が 失われようとしているのだ。

小狼は、こんなにも意気消沈した彼女を初めて見ていた。

さくら: 「瑠美ちゃんは...?」

小狼: 「遷のカードを使ったんだな。 泣きながら、どこかへ行った。」

さくら: 「そう... 追いかけなきゃ。」

小狼は、慌てて制止しようとした。 だが、恋人の決死の表情に後ずさった。

小狼: 「ばか! 魔力を消耗しているんだ。 休むんだ!」

さくら: 「小狼くん。 瑠美ちゃんは今、あたし以上に助けが必要なの...」

少年はため息を漏らすと、背を差し向けた。

小狼: 「早くしろ。 たぶん、外に逃げたはずだ。」

さくらは背負われる時に、気絶したようだった。 小狼は、彼女の寝息を感じて思った。

小狼: 一生、守るからな。さくら。

その時、研究所内に甲高い警報が響き渡った。


管制室の大きなモニターに映る映像。 それには、より輝きをつよめる 異星の 「砲台」 があった。 だが、誰も見ていなかった。 所員たちは避難を 始めており、聡、グノーム、美佐子の三人だけが残っていた。

聡は、アフリカとアンデスの二つのアンテナが映るモニターをぼんやり 見つめていた。

聡: 「これで、終わりか。手がかりは消えてしまうだろう。」

突然、老科学者が大声を上げた。 データをバックアップしていた美佐子は、 驚いたように二人を見た。 温厚な老科学者が、所長の胸ぐらを掴んでいたのだ。

グノーム: 「そうじゃない、今の君のやることは別にある。」

聡: 「せ、先生。」

グノーム: 「あの子を、このままにしていてもいいのかね。 君が何のために、 ここまでやってきたかわかるよ。 自分の為じゃない。 瑠美君のためなんだ。」

聡: 「わたしは、恒星間通信に道しるべを...」

グノーム: 「美子さんの母星とコンタクトをする。 彼女を普通の生活に 戻したい。 だが、今の君は多くの人々を巻き込んでいる。 何よりも 大切なあの子は...」

中川聡は、老人の手を引きはがして席に沈み込んだ。

聡: 「私はあの子を憎んでいます。」

グノーム: 「そう言って、あの子を避けている。 それはそれでいい。 だが、 すべてが失敗に終わろうとしている今、きみにもしもの事があったら、 瑠美くんは一生ひとりぼっちに終わるんだぞ。」

聡: 「天宮さんにもしもの時はお願いしています。」

グノーム: 「あのお嬢さんとて、所詮は他人なんだ。 あの子が失う、かけがえの ないものを補うことは無理だ! ひとりぼっちの子は、自分が何のためにこの世に 生を受けたか知ることが出来ない。 それは、死そのものだ。
  人は人なりの生き方を行く。 君の生き方が、奥さんと娘にあったように、 瑠美くんには二人の親が絶対に必要なんだ。 例え憎んでいるにしてもな。」

そこへ美佐子が進み出て、机にデータディスクを置いた。

美佐子: 「博士、データのバックアップが終わりました。 所長、いえ聡さん。 どうか、瑠美ちゃんのところに行ってあげてください。 私、解ります。 あなたが瑠美ちゃんを天宮さんに委ねるとき、 どんなに残念だったか。」

美佐子はポケットからGPS探知機を取り出した。 探知機のモニターには、反応が 止まっていた。

美佐子: 「反応からすると所外のパラボラにいるはずです。」

グノーム: 「屋外は寒い。 早く行ってあげなさい。」

聡: 「... はい。」

一人の父親が責任という自縛から離れて走り始めた。 だが、室内に残った二人は 危機の到来を痛いほど感じていた。

美佐子: 「博士! 砲台の輝きが!」

モニターでは、あの兵器が身の丈の半分以上をすでに輝かせていた。


研究所の正門は内部から出てくる所員らで騒然としている。 警察のパトカーが 警告灯を点滅させながら、警戒している。 天宮老人は、乗用車から降りて 唖然としていた。

警官: 「天宮さん! 避難命令が出ました。 早くここから離れてください。」

園美: 「どうしたんです? いきなりサイレンが鳴って...」

父さん: 「お爺さま! 中川博士です。」

白衣姿の聡は老人に気づき、走ってきた。

聡: 「会長! お早く避難なさってください。」

真嬉: 「どういうこどだね。 君の研究と関係があるのかね。」

聡: 「あとで、お話しします。 お会いできればですが。」

それだけだった。 時間が逼迫しているのをだれもが感じていた。


地上から30メートルもの高さにあるパラボラアンテナは、北西の風に運ばれた 雪によって白く覆われていた。 その白い中、アンテナの焦点に向かうはしごの 途中にピンクの塊がうずくまっていた。 瑠美である。

瑠美: ベン... おばさん。

彼女の手は、低温の手すりに張り付き、膝小僧からの血が、点々と雪の中に残っている。

春の日差しの中を、瑠美が歩いている。 森の片隅で親子連れの熊がいる。

瑠美: 「マジにやばーっ」

慌てて後ずさりする。 しかし傍らに子熊がいる。

瑠美: 「お母さんとはぐれたんだ。」

子熊の手を取り、だっこして、よろめきながら先程の親子熊のところへ歩いていく。 しばらくすると... 瑠美と子熊たちが、母熊に抱かれて眠っている。

雪と風がやんだ。 すると薄日が差して、キラキラ光る雪の結晶が周囲を 舞っている。 ダイヤモンドダストである。

瑠美: 寒い... さむい... おかあさ...


霊廟では二つの光がうろうろしていた。 本来の姿を持たない異星人たちは、 焦燥に駆られていた。

ラビッ太: 司令! もう、がまんできません。

ラル: でも、今行ったら...

水槽内の女性は静かに目を開けた。

美子: 二人とも、ここで、私たちの運命が決まるのよ! 耐えて。

だが、遅かった。 美子の声が伝えられると同時に、彼女の部下たちはそろって 立ち去ったのだ。 静寂の中、かつての指揮官は何も関与できない無念さを噛み締めた。

美子: わが母星の長老よ。 どうか、どうか... 私たちにお慈悲を...


音もなくキラキラとダイヤモンドダストが舞っている中、瑠美は眠気に襲われて いた。 地上の騒ぎもここまで届かない。 手足の痛みも解らなくなり、彼女は 死にかけていた。

さくら&小狼: 「瑠美ちゃん!!」

魔法の杖に乗った二人の魔法使いが、下から上ってきた。 彼らは、何もかも忘れて 少女に呼びかけた。

瑠美: 「パパ! ママ! きちゃだめ! もうすぐ恐ろしい光がくるわ。 逃げて!!」

さくら: 「だから逃げるのよ! さあ、いらっしゃい!」

だが、瑠美はさくらの差し出す手を振り払った。 そのため、魔法の杖にしがみついた まま、彼らは上空に逃げた。

瑠美: 「もういいの! あたしなんか! あたしになんかお母さんも来てくれない。 もういや! みんな、みんな、だいっ嫌い!」

小狼: 「解らないのか! きみのお母さんが呼んでいるんだ。」

瑠美は立ち上がり、大声で泣きわめいた。

瑠美: 「だったら、ここにお母さんを連れてきて!」

さくら: 「瑠美ちゃん!」

瑠美: 「お母さんはもういないんだ。 あたしを一人にして、あの星に 帰ったんだ。 だから、もういいの。 あたいのいるところはないんだ。
森のみんなの声も聞こえない。 聞こえるのは、大人たちのイヤな声ばかり。」

聡: 「それは、おまえが成長したからだ。」

三人: 「!!!」

中川は二人の魔法使いがパラボラに降り立つのを待たなかった。 彼の顔は、厳しい寒さの ために髪から氷柱が出来かかっていた。

聡: 「瑠美。 今のおまえは無意識に、お母さんの声を遮っている。 森の友達の声も 聞こえないのは、おまえが彼らを求めていないからだ。」

瑠美: 「嘘! 嘘つき。」

瑠美は父親の手を逃れようと後ずさりした。

聡: 「想い出すんだ。 森のみんなと一緒に過ごした時を。」

冬至の太陽を追尾するアンテナは、低い角度でゆっくりと動いている。 だが、 それでも目もくらむような展望が拡がっている。 さくらは、小狼の手を借りてやっと アンテナに乗り込めた。 だが、彼女は父親を目の前にした少女に何も言えなかった。 瑠美は、 あとずさりをしながら、助けを求めるように小狼とさくらを見た。 だが、一時の パパとママは助けてくれなかった。

出し抜けに、瑠美の背中から後ろが無くなった。 彼女は、パラボラアンテナの焦点部分に たどり着いたのだ。 その時、空中に美しい声を奏でる妖精が表れたのだ。

小狼: 「そうか、ソングだな」

さくら: 「瑠美ちゃん、想い出して。 みんながあなたを大好きだってこと。」

ソング: 「♪〜〜♪〜〜♪〜〜♪」

さくらカードの妖精は、主の真心を、幼子への限りない慈しみをハミングに換え、 幾度も幾度も歌った。

瑠美: 「あたし... あたし。」

彼女は目頭が熱くなり目をそらした。 瞬時、彼女は見た。 山々の稜線に多くの動物たちが 並んでいるのを。

瑠美: 「みんな。 いつもの冬だったら、おねむなのに。」

さくらと小狼はほっとしたように、肩を抱き合った。 だが、事態は変わっては いなかったのだ。 聡が管制室からの電話に答えた。

美佐子: 「所長! 異星の砲台は動きを止めていません。」 聡: 「何! この子が命令しているのではないのか!」 グノーム: 「もう時間がない! 早く逃げるんだ! ツバメのデータでは、三基の砲台は 間違いなく、我々を狙っている!」

瑠美の目の前の人は、絶望に駆られた人間だった。


研究所の屋上では、守護者であるユエとケロベロスが翼を伸ばして飛び上がった。 知世は、 ユエに抱き抱え上げられながら、ヴィデオを危うく取り落としそうになった。

ケロベロス: 「早うするんや! この気配は、わてらには手が出せん。」

知世: 「でも! さくらさんと小狼君が。」

ユエ: 「我らの主は、何があろうとも逃げたりはしない。」

ケロベロス: 「そうやな。 二人とカードたちを信じるしかないわ。」

知世は、黙ってうなずくしかなかった。 守護者たち以上に、彼女も親友を 信じていた。 かならず帰ってくると。


アンテナの上のさくらと小狼、中川聡は凍り付いたように、傷心の女の子を 見ていた。 誰もが何と言っていいのかわからないのだ。

瑠美: 「みんな、みんな。嘘つきだ...」

瑠美は怒りにふるえながら立ち上がった。 梯子段から手を離した瞬間、皮膚が破れて 血が吹き出た。 だが、幼子は目を真っ赤に怒らせたままだった。 さくらは、 どう慰めていいのかわからなかった。 そう、瑠美は一人なのだ。 たった一人で孤立した少女。

さくら: 「瑠美ちゃん! あなたのお父さんよ。 その人がいなかったなら、あなたは 生まれなかったのよ!!」

瑠美: 「言わないで!!」

その時、急にアンテナが急角度で傾斜を始めた。 太陽を追っていた動きから、急速に 矛先を逆転する方向に、地面目指して回転を始めた。 同時に、瑠美は頂上のアンテナから転落した。


管制室のモニターに映る三基の砲台は全体を真っ白に輝かせていた。

美佐子: 「博士、あれは完全にエネルギーを取り込んだみたいです。」

グノーム: 「いかん! 脱出だ。 来るぞ!!」

次の瞬間、砲台の先端から電光のような稲光が走り、その後尾から急速に光が 先端に向かって駆け抜けた。 宇宙の彼方で、三基の砲塔から強烈な輝きを持った、 輝く光束がほとばしった。 瞬後、モニターは映像を失った。

美佐子: 「砲撃です。 博士、ツバメも破壊されたようです。」

グノーム: 「急ぎなさい! 攻撃は光速で襲来する。 よもや、この星を 破壊することは出来まいが...」

二人は文字どおり、転げんばかりに管制室を飛び出し、必死に駈けだした。 ただただ、 生き延びる為に。

グノーム: まだ来ない? 攻撃は、光速よりも遅く来る... 異星の人々の 慈悲とは恐れ入るよ。

美佐子: 聡さん... 瑠美ちゃん...


とっさに、小狼はさくらを抱きしめたまま手摺りにしがみついた。 間一髪、逆さまに なったアンテナから雪の固まりが猛烈な勢いで地上に落下する ところだった。 落ちてきた大きな雪塊に中川は打ちのめされた。 だが、彼は 手すりから身を乗り出して、娘の足首をつかんでいた。 宙づりになった瑠美は、 怒りも燃え尽きたのか。 泣きながら、父親に向かって叫んだ。

瑠美: 「うそつき!」

聡: 「私は、ひどい男だ。 自分の野望のために、愛するものを欺いた。」

瑠美: 「嘘つき!!」

聡: 「多くの人を巻き込み、ただただ自分の名誉を望んだんだ。」

瑠美: 「嘘つき!!」

聡: 「平気で娘を遠ざけ、親らしいこともしなかった。」

アンテナは急角度で傾き、さくらと小狼は何も出来なかった。

聡: 「私は... お前が憎かった。 お母さんは、お前のことだけを考え 自分の事を顧みなかった。 私との時間よりも、お前を、お前に 命を授けることを優先した。」

瑠美: 「お... お父さんのバカーーっ!」

瑠美の涙は涸れることがなかった。 手足の痛さよりも、父親の懺悔の声に 耐えられなかった。 そこへ、白い光点が現れた。 異星人であるラビッ太と ラルの本性である。

ラル: 瑠美ちゃん! 何て事をしたの。 ビームが来るわ。

ラビッ太: 司令は、待っていたんだ。 もう遅い! 破壊ビームは太陽重力場に 影響されることなく、ここへ来る。

瑠美: 「みんな、逃げて! ごめんなさい... 逃げて...」

すべてが同時に到来した。 一同の目には天空から去来する金色のビームが 太陽を覆い隠すように拡がって見えた。 その時、一直線に、すばらしいスピードで 魔法の杖に載った女の子が飛び込んできた。

娘: 「来たわね。 バリア!! ネオ・ウィンディ!」

娘の周囲に広大な魔法陣が展開され、その中から光の帯をまとった妖精が飛び出した。

さくら: 「ウ、ウインディ??」

天空から去来したビームの中に妖精は入り込んだ。 妖精を守る光がビームを 反駁しているのだ。 そして、妖精の触手がさくら、小狼、中川、瑠美を優しく 絡め取り、保護した。 さくらの目の前で、かつての夢が再現された。 異星文明の 放ったビームが、アンテナを包み込むや、見る見るうちに分解させていったのだ。


避難した一同の前でビームが消えると、そこには夥しい金属片が雪原にばらまかれていた。

美佐子: 「異星人の制裁ですか。」

グノーム: 「彼らは、我々以上にこの宇宙を知り、同じ科学を遙かに 進歩させている。見事なものだ。」

そこへ別の所員が駆け込んできた。 彼は携帯電話を美佐子につき出した。

観測員: 「アンデス山中のアンテナは、今から5分前に攻撃を受け消滅。 カラハリ砂漠のほうも、今消滅したとの連絡です。」

美佐子: 「... これからどうなるのでしょう?」

グノーム: 「さあ。 ただ、人間は自分以上の存在を認めない。神以外はね。」

美佐子: 奥様、どうか瑠美ちゃんを叱らないでください。

空は、抜けるように蒼く、太陽が輝いていた。


霊廟で親子が対面していた。 瑠美は涙の跡の残る顔だったが、薬液の中に横たわる 母親をじっと見つめていた。

瑠美: 「あたし、いつか必ず、お母さんを自分の腕で抱きしめる。」

彼女は、傍らに立つ父親を無視していた。 それが当然と、中川聡は受け 止めていた。 そして、愛する二人が来ていることを知っているにもかかわらず、 美子は何も言わなかった。

宇宙の彼方、宇宙探査機が飛行している。 青白い太陽の光を受けて電池板が輝くが、 活動を停止した本体は猛スピードで、ガスの中心に向かって吸い込まれていった。 やがて、 ガスが晴れると、そこには美しい星があった。 陸地の無い海だけの星。 その周囲には、 あの鋭い四角錐の物体が幾つも幾つも漂っていた。



               

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