DESTINY

第 3 章

作者: SAKURA AKA MICHELLE
翻訳: Yuki Neco

幼いさくらは高い声を上げて背後を走ってくる追っ手から逃げていた。 「もうだめぇ!」 と笑いながらさくらは叫んだ。

さくらが止まってしまったので、すぐに小狼は速度を落としてさくらを を捕まえた。「捕まえたぞ。」

さくらはふくれっつらをして、「あたしにも勝たせてよ。」 と言った。

小狼はにやりと笑い返し、他の家族がお茶を飲んでいる居間にさくらを 引っ張っていった。 一人が入ると、居間にいる人たちは黙ってさくらを 見つめるので、さくらはびっくりして小狼の後ろに隠れて彼の手を握って いる。

「で、18歳になるまでここにおいとくの?」 と、長女の芙蝶が訊いた。

夜蘭はうなずいて、「そうよ。 他に何か質問は?」 と言った。

「もう一ついいかしら?」 黄蓮は恥ずかしそうに訊いて、母親の返事を 待っている。

「いいでしょう。」 夜蘭が答え、第四女に自由に話すことを許可した。

「この子は小狼と結婚するの?」

小狼は自分が話題になったことを知って 「なんだって?」 と訊き返した。

夜蘭は小狼を払って、「既に苺鈴が名乗りを上げています。 それに、 未来の世代をさらに強力に保つためには、正しい血筋を守ることが必要です。」

「そのとおりね。」 と言って、緋梅と雪花が同意した。

無視されることを望まない小狼は、さくらを引っ張って母親のもとへ まっすぐ走ってきて、「じゃあね、お母様。」 と言った。

「それでは失礼致します、李女王様。」 さくらは自分が礼儀正しく挨拶できているか わからないながらも、そのように言った。

さくらの作法を見た夜蘭は、「なんてかわいらしい! あなたが 姫でないとは、なんてもったいないことでしょう。」 と笑を浮かべた。

姫と言う言葉を聞いただけでさくらは瞬間的に青ざめたが、 小狼が 「プリン食べる?」 と訊くとそのこともすぐに忘れてしまった。

さくらは本当に飛んだり跳ねたりして喜んだ。 女王が心から笑い、「この子を見てると 私たちも楽しくなってきます。」 と言うのを見て、小狼は冷や汗をかいた。

さくらは長いすの女王の隣に座り、小狼がくれたプリンを幸せそうに食べた。 みんなはさくらの動きの一つ一つを見て楽しい気分になり、明るい子だと 感想を述べた。 さくらはみんなが話していることを理解できなかったが、 自分の名前を聞くたびに微笑んでいた。

さくらは最初のプリンを食べ終えると、「プリンをもう一ついただいても いいですか?」 と言った。

「偉。」 夜蘭は家来を呼んだ。

「は、女王様。」 偉がすぐに現れ、用を訊いた。

「この子にもっとプリンを持ってきなさい。」

「かしこまりました。」 そう答えると、偉はさくらのほうを向いて、 「そのカラのカップを持っていきましょうか?」 と言った。

さくらは彼を見て、言っていることがわからなくて微笑んだ。 偉がもう一度 質問を繰り返すと、そのプリンのカップを渡してほしいことが理解できた。 さくらは首を振って椅子からすべるように降りて、「自分でプリンをいただきますから 案内してくれますか?」 と偉に言った。

「もちろんですとも、女王様がお許しくだされば。」

さくらは夜蘭を見て 「よろしいですか?」 と訊いた。

夜蘭がうなずいた瞬間、さくらは偉の前に飛び出し、 偉は追いかけるように走っていった。 その様子を見て夜蘭は笑っていた。

「お母様はさくらを追い出すの?」 小狼は不意に夜蘭をつかんで尋ねた。

「どうしてそんなことを?」

「母上が言いました。」

夜蘭は微笑んで小狼の頭に手を置いた。 「さくらは18歳になったら 誰かと結婚しないといけません。 そうなると、ここはさくらの居場所ではない から、当然、城から出て行かないといけません。

「では、なぜここに連れてきたの?」 小狼は反論した。

「小狼、さくらは孤児です。 自分で生活できるようになるまでは 誰かが面倒を見ないといけないでしょう。」

「あの...」 小狼は母親の言うことが理解できながったが、 「もう行ってもいいですか?」 とゆっくりと訊いた。

「ええ、お行きなさい。」 と夜蘭は答えた。

さくらが明るく笑いながらプリンの入ったカップを両手で一つずつ 持ってきたが、小狼がいなくなっているのに気づいて表情を曇らせた。 さくらはもう一つのプリンを見ると、恥ずかしそうにそれを夜蘭に 差し出した。 夜蘭はプリンを受け取ってくれた。

「ありがとう、さくら。 あなたはなんて優しい子でしょう。」

再びさくらは笑った。 さくらはもぞもぞと椅子によじ登り、幸せそうに プリンを食べながら、おいしいと声を上げた。

そのとき、王家の家法に危険が迫っていることを知るよしもなかった。

つづく...



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