DESTINY

第 2 章

作者: SAKURA AKA MICHELLE
翻訳: Yuki Neco

ヒカル医師はさくらを部屋に残して、夜蘭と話をするために部屋を出た。 さくらは目の中の異物の感覚をやわらげようと何度か瞬きをし、 早くコンタクトレンズをはずしたいと思っていた。 違和感で涙があふれてきて、さくらは目をこすった。

ドアが静かに開いて苺鈴が入ってきた。 「ケガをさせてごめんね。」

「そんなに気にしないでください。 ちょっとかすっただけですから。 二・三日で良くなりますわ。」 と、さくらは安心させるように言った。

「私になにかできることはない?」

さくらは何度も首を振って、笑いながら言った。 「あたしをここまで連れてきてくれて、お医者さんに手当をしていただいて、 もう十分に厚意を受けました。 これ以上なにかを頼むだなんて。」

苺鈴が泣きそうな顔になったので、さくらは慌てた。 「あ、その... その...」

「それじゃ、きれいなお洋服を貸していただけますか?」 さくらは苺鈴の機嫌が直ることを期待しながら、そう言った。

苺鈴は、すぐに明るい表情になり、「私の服でいい?」 と訊いてきた。

「もちろんです! 着られるものならなんでもいいんですよ。」 と、さくらは答えた。

苺鈴がそれに答えないうちに、夜蘭が部屋に入ってきて、 身震いをしてしまうような表情でさくらを見つめ、 「あなたも一緒に連れて行くことに決めました。 お医者様も一緒に来てくれて、あなたが完全に治るまで、 治療をしてくださると言ってます。」

「どうして?」 さくらは、かすれたような声で訊いた。

夜蘭は微笑んで、さくらの頭に手をおいて、 「あなたが孤児であると聞きました。 それに、私はずっと娘がいたらって思ってたんです。」

「もう4人も娘がいるじゃないですか!」 と、小狼は言った。

「あら... 4人も娘がいたとは忘れておりました。 でも、わたしたちと一緒に暮らしてください。 わたしたちの城へ来てください。」

さくらはヒカル医師が大丈夫だとうなずいているのを見た。 そうした方がいいことは否定もできなかったので、 「わかりました。 ご好意、ありがとうございます。 李女王様。」 と言って、さくらは夜蘭に、貴婦人のような 丁寧なお辞儀をした。

苺鈴はびっくりして叫んだ。 「すごくきれい! どこで習ったの?」

「ほえ?」

「あなたのお辞儀のことを言ってるんですよ。」 と、夜蘭が説明した。

ヒカルが眉をひそめているので、正直に話してはいけないと、 さくらは思った。 「どこかでちょっと覚えただけです。」 と、 さくらは、瞬きとか嘘をついているようなそぶりをしないようにして、答えた。

苺鈴が突然、さくらの手をつかんだので、さくらは驚いて飛び上がった。 「どうやったら、転んで顔を打たないように、 お辞儀ができるか教えてくれない?」

「いいですよ!」 その時、さくらは小狼が会話の外にいたことに気づいて、 話題を変えようとした。 「李王子、香港ってどんな感じの所なんですか?」

小狼はさくらの質問に驚いたような表情になり、口ごもったように答えた。 「香港は、ここに... じゃなくて、日本にとてもよく似ている。 そうだ... その... 日本に似ている。」

目林は小狼が恥ずかしそうな表情をしているので、 笑いながら、「小狼が赤くなってる!」 と言った。

「苺鈴...」 小狼は不機嫌そうに言った。

「李女王様、日本までは、どうやって行くんですか?」 と、 さくらは尋ねた。

「李家の自家用機でです。 それが一番早いですから。」

さくらはそれを聞いて、恐れおののいたような表情をして、 静かにつぶやいた。 「私のお城にはそんなものは...」

「今、なんと?」 夜蘭は訊いた。

「その... お城にそんな最新の機械があるんですね! すごいです!」

「すぐ出発するんですか? ホント、お家が恋しいわ。」 と、苺鈴がせかすように言い、それを見た夜蘭の顔に笑いが浮かぶ。

「国が好きなのね。」 と、李女王が言うと、苺鈴はその賛美に顔を赤くした。


ヒカルとさくらは落ち着かない様子で李家の自家用機に座り、 慣れない感覚を感じていた。 二人が飛行機に乗るのは初めてだった。 小狼はさくらを安心させようと、飛行機に乗っていれば安全だと言った、 先ほど、ヒカルに支えられてさくらが、おそるおそる飛行機に乗り込んだ時にも 小狼が言ったことだったが。

「本当に安全?」 と、さくらは5回も同じ質問をしている。

小狼はため息をつき、上の方に視線を送って、「ああ、絶対に大丈夫だ。」 と答えた。

「でも...」

「なにも起こらないと約束する。 さくら、パーティは好きか?」 小狼は、話題を変えて質問した。

さくらは悲しそうにうつむいて、「わからない。 パーティに出たことないんです。」 と答えた。

「そう。 絶対好きになるわ! 保証する。 パーティって最高。」 苺鈴は放っておけずに、甲高い声で話に加わる。

小狼は突然、微笑んで、苺鈴と楽しそうに話しているさくらに話しかけた。 「俺たちがもう飛んでるって知ってたか?」

「ほえええええ!!!!!!」 さくらは大声で叫び、命ほしさにシートにしがみつき、 目をギュッと閉じた。

「小狼! そんなこと教えちゃダメ!」 と、苺鈴が怯えているさくらを見て、 小言を言った。

小狼はそれを見て眉を上げ、「いや、まだいいほうだ。 あの医者を見てみろよ。 気を失っている。」

第2章 おわり


あとがき — 作者記

1800年代に飛行機ってありましたっけ? 歴史は本当に苦手なので。 ま、でも、お金持ちは飛行機をもっていたってことにしてください。 車はどうかなぁ? 馬車とかならわかるんだけど。 で、この章の終わりはどうでしたか? 私は好きですが、 飛行機に乗っているさくらちゃんが、命の危機を感じるところは もうちょっと面白い方が... と思っています。 みなさんはどうですか?

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