免責事項

大切な第1章のため、登場人物たちに免責事項の発表をしてもらいましょう。

小狼作者は所有してないからな。
さくら小狼くん、それじゃわかんないよ。 「作者は私たちキャラクターの著作権を所有していません。」 って言わなきゃ。
ケロせや。 わいを所有したくないやつなんて、おらんはずやけどな。
小狼正気なやつは普通いやなはずだ。 さくらだけだぞ、我慢してくれるのは。 自分をラッキーだと思え。
ケロなんやて、小僧?!
小狼さくら以外に誰もおまえを所有しないと言ったんだ。
ケロなんやて。 やるか、小僧。
さくら二人とも、やめてよ。 ほら、エリオルくんと山崎くんが来たよ。
山崎免責事項って、自分の子供を手放したい 父親がはじめたって知ってた?
エリオルそうなんですよ。 その父親は、 自分はその子供の親権を所有していないと言いたかったのですが、 法的な手段が必要だったんです。
千春::山崎の耳をつかむ:: ウソはそこまでよ! いらっしゃい!
さくらウソだったのぉ?????
小狼お、俺は気づいてたからな。
さくらほえぇ...
Sakura sama Blossomこれからは、免責事項には 立ち会った方がよさそう... まとめちゃいます。 私はいかなる手段においても、 ::しくしく:: カードキャプターさくら、および、そのキャラクターの 著作権を所有していません。 Cardcaptors と カードキャプターさくらは、 それぞれ、Nelvana と CLAMP が著作権を有しています。 この作品は、 私 (Sakura Sama Blossom) の創作であるので、著作権は私が所有します。 この作品が他の作品と似ていたらごめんなさい。 説明するなら、FanFiction.netで たくさんの作品を読んでいるうちに、いろんなアイデアが刷り込まれちゃったんです。 では、本編へ。

夢の奥で

第1章: 恐怖を怖れないで

原題: In the Depth of Dreams
作者: Sakura Sama Blossom
翻訳: Yuki Neco

褐色の瞳をした青年が、お姫様のために、キッチンで朝食の準備をしていた。 ベーコンは良い感じに焼けて、タマゴは、口に入れた瞬間に崩れてしまい そうなくらいに、非常に軽くふわふわな感じになった。 新鮮なオレンジジュースを絞り、果肉はそのまま残してある。 栗色の髪の青年は明け方から起きて、18年の 人生の大半をそうしたように、武術の稽古をしていた。 しかし、最近になって、 彼は変な行動、つまり、意味もなく微笑んでしまう自分に気づいた。 ある人に言わせると、だいぶ柔和な人物になったということかもしれないが、 彼自身が許す限りで近づいてみてみると、エメラルド色の瞳の少女の 存在こそが、彼の変化の理由だと言えるだろう。

最後に、朝食と三つの皿に盛りつけると、他の皿を注意深く ディッシュ・ウォッシャーの中に入れて扉を閉めた。 小狼は疲れた様子で、ウォッシャーの扉にもたれかかり、近くにあった緑色の タオルで手を拭いた。 暗い円が小狼の眼下に存在していたのだが、 そのことには気づかなかった。 小狼は前の晩に悪夢にうなされていたのだった。 しかし、どうしてそんな 一晩中よく眠れない状態になったのか、どんなに 思い出そうとしても思い出せなかった。 しかし、突然、小狼の体に 寒気が走った。 緑色のセーターと ベージュのジャージを着ているというのに、 小狼の首筋の毛は逆立ってしまった。 その寒気はほんの一瞬で通り過ぎたので、 小狼は寒気自体を感じたのか疑ったが、真実であることを確信した。 自分を落ち着かせるために、小狼はディッシュ・ウォシャーの回転を数えた。

思いついたように小狼は腕時計に目をやり、それから静かに、「3... 2... 1...」 とカウントした。

キッチンの隣の部屋からベルの音がかすかに聞こえてきた。 それからすぐに、 金切り声がアパートに静けさを貫く。

「ほえええええ!!!!」

それに続いて、広い家を走りまわって散乱した服を探す少女の姿が現れた。 こちらで靴下を、あちらでネクタイを拾い上げ、カウンタで席についた小狼が 食事をしながら、自分を見て笑っていることに気づいていなかった。 さくら自身、 自分がどんなに変な姿かをわかっていなかった。 彼女の桜模様のピンクの パジャマは、彼女も眠つけぬ夜を過ごしたことでしわくちゃになっていた。 さくらも、前の晩は何度も悪夢にうなされたが、小狼とは違って、 夢の細かいところまでが記憶にあった。 でも、そんなものは覚えていたくなかった。 普段はきれいにセットされて、まとまった髪型も、その朝、まだ髪を といていないので、形がゆがんでいた。 彼女の慌てた姿は、そんな見た目に 追加されて映りこむだけだった。

さくらはなんとか、小狼に手伝ってもらわないで、友枝高校の制服を見つけ出し、 服を着替えるために、自分の部屋に走って戻った。 さくらは、まず、苺鈴が 4年前に香港に帰ってしまったことに感謝した。 そうでなければ、さくらに 個室を与えるため、逆に、小狼が自分の部屋を明け渡してソファで寝るなんてことに なりかねなかったからである。 特に、自分がよそ者で、小狼の生活に割り込んでいる ということもあって、さくら自身、自分の部屋を要求することはできなかった だろうと思った。 さくらはやっと友枝高の制服を着て、鏡に姿を映して確認した。 友枝高の制服は友枝小とは少しだけ違っていた。 スカート、上着、ネクタイ、 校章、靴下、靴という基本構成は同じであるが、そのそれぞれに若干の 違いがあった。 スカートはどちらかというと、友枝小のチアリーディング部の練習 ユニフォームのスカートに似ていた。 そう考えると、当時よりもスカートは短く、 裾にはストライプの刺繍が施されていた。 スカートの地は青で、ストライプが 白になっている。 友枝小の制服はワンピースだったが、今では、上着は白くて 軽い素材でできたブラウスで、左肩に校章が刺繍されている。 面白いことに、 友枝高の校章も友枝小のものによく似ていると、さくらも思っていた。 さらに、学校色 (青と白) のネクタイがあればすべてがそろう。 ネクタイの縁は 青で、その内側が白になっていた。 スカートの短さを補うように、女子は ハイソックスをはくように決められていた。 靴は以前と同じ黒い靴である。

制服のことばかり考えていたさくらは、髪型を整えるのを忘れそうになっていた。 知世がさくらに髪を伸ばすように言っていたので、そんな再従姉妹 (はとこ) に 小言を言われないように、さくらは髪を伸ばしたのだった。 しかし、困ったことに、 さくらがいつものように、両サイドに髪の毛を下ろして、時々やるように、 髪をリボンで留めたいというと、知世の小言は増えてしまうのだった。 知世はそんなのは受け入れられなくて、常にさくらに意見をしてきた。 知世は、なんとか、シンプルなポニーテールからアップスタイルの 高貴で複雑な髪型に至るまで、いろいろな髪型の作り方をさくらに教えてきた。 その日、さくらは制服の色とマッチする群青色のリボンで、シンプルな ハイ・ポニーテールにしようと決めた。 そう決めたさくらは、ドアを開けて、 ポニーテールの仕上げを頭にのせた。

顔を上げると、それには小狼が座っていた。 怪しそうに小狼をちらりと見て、 いとことも喋らずに椅子に座って朝食をとり始めた。 小狼はずいぶん前に 食事を終わって、さくらが小食を食べるのをずっと待っていた。 さくらを 見ている間、彼は笑いを堪えていたが、ついに、笑い声が漏れ、 笑いをかみ殺していたせいで目に涙が浮かんできた。

何の理由もなく小狼が自分を笑っているので、さくらは怒って深く傷ついた。 もう我慢できなくなって、さくらは、「あたしのどこがおかしいの?! ふん! 時々、ホントにムカつくんだから、李小狼くん!」 と大声で言った。

この声に、小狼は少しおとなしくなって、返事をした。 「さくら... うぷぷ... 今日は... あはは... どういう日か... くくく... わからない?」

さくらはそれにどう言っていいかわからなかったが、大切な日を 忘れてしまっているのかと思い始めた。 しかし、大切な日だとしたら 小狼がそんなふうに笑ったりしないと思い、その可能性はすぐに捨てた。 そう考えた時、さくらの思考はまどろみ始めて、今日、何が大切なのか 考えようとしていたことも、すぐに忘れてしまった。 小狼くんが、最近、 普通の人のように笑ったのはいつのことだったかしら? 最近、小狼がいつ、前よりも明るい性格、より幸せそうになって、 しょっちゅう笑うようになったのか、さくらは思い出せなかった。

そう思うと、さくらは、みんなが笑えば世界中が住みよくなって、 なんてステキなことだろうと考え始めていた。 でも、誰も笑わ なくなったらどうなる? 世界は変わるかしら? くすんで暗い世界になるかも。 それはとても怖いことだ。 さくらは、その場所ではなく、どこが他の場所に いるような気がして、眠気を感じはじめた。 頭がふらついて、なぜだか、 誰かが名前を呼んでいる。 さくらの思考はすぐに断ち切れ、小狼が さくらの名前んでいることに気づき、さくらは現実世界に戻った。

「さくら。 さくら! さくら!!」 小狼は、さくらの顔に漂ううつろな表情を 取り払おうと、さくらを揺さぶった。 数時間経過しただろうか。 さくらは、 瞬きをして、首を振って、何事もなかったかのように微笑んだ。

「ごめんね。 ぼーっとしてたみたい。 何か言ってた、小狼くん?」 と、 さくらは何も知らない様子で質問した。

自分の名前を言われて、小狼の恐れは小さくなり、手元の滑稽な 状態が戻ってきた。 「だから、今日は日曜日だから、学校に行く支度 しなくていいと言ってんだ。」 と、小狼は言った。

これを聞いたさくらは怒って、「あたしが学校に行く準備してる間ずっと、 そう思ってたのね。 小狼くんは、あたしが大慌てで、いろいろ探し回ってた あたしを見ていながら、何も言ってくれなかったわけ?! なんて薄情なの? 小狼くんだけは、時間どおりに支度しないといけないと あたしがどんなに焦ってたかわかってくれてると思ったのに! ふん!」と、 バックパックの中身を出しながら言った。 さくらの顔には、怒りと恥ずかしさが 混じっていた。 さくらカードをテーブルに叩きつけ、教科書を そのピンクのカードの隣に置いた。

「小狼くんを見損なったわ。」 と、からかい半分に、指を振りながら さくらは言った。 その仕草を見て、小狼は、さくらの怒りもおさまって、 自分も安全になったと認識した。

さくらは自分の皿を取ろうとしたが、小狼も同じことをしようと していたことに気づいた。 すぐに手を引っ込め、二人はお互いを見れなくなった。 もし見たならば、二人とも相手の顔が見たこともないくらい 赤くなっていると思った。 その色は、完熟トマトのような、いや、むしろ、 ブルゴーニュワインを少し加えた時の色のはず。 ちょうど、黄色いクマの ぬいぐるみのような生物が鼻をくんくんさせながら入ってきたので、 二人のカードキャプターは気恥ずかしい雰囲気から解放された。 その点テンの目を開いて、その生物は、三番目の皿に興味を示した。 皿の脇に静かに着地すると、その封印の獣は背後から小さなフォークを 取り出した。 すばやくフォークにとったものを口に入れ、喋り始めた。

「なんか... むしゃむしゃ... うまそーな... ごくっ... においがする思うたら、 今日は... ボリボリ... 小僧が... 朝飯つくる番やったんやな。 ズズズ... さくらはわいを呼びに来るんやけどな。」 この台詞だけで、ものを食べる 音が聞こえなくなり、その ぬいぐるみのような生物は後ろに倒れると、 満腹の腹をさすった。 「朝飯も なんとなく食えたし、 ザイロン・ウォーリア(注) の最終面がクリア でけんかったことも忘れたる。」

訳者注> Cardcaptors (北米版) のタイムのエピソードでケロちゃんがやってた ゲームの名前。 日本語版では、ゲームの名前は出なかったです。

その直後、例の二人は (アニメのように火柱を散らして) にらみ合った。 言い合いをしている間、さくらは、そばから離れたいと思ってひきつった 笑いをしていた。 でも、にらみ合いが始まると、さくらは我慢ならず、 勇気を出して二人の間に割って入り、二人を手で引き離した。 小狼を見て、「朝食 とってもおいしかったよ。 ありがと。」 と言った後、 何かを要求するような目でケロを見た。

「小僧、うまかったで。」 と、しぶしぶ言った。

「ケロちゃん!」 と、さくらはケロに注意する。

「ごちそうさまでした。 しゃおらん。」

「それでいいのよ。 礼儀正しくするのはいやかもしれないけど、 それが一番なんだから。

小狼に対するフラストレーションを取り除こうと、ケロは無理矢理、 話題を変えようとして言った。 「で... さくらさんは... どうして制服を着ているんデスカ? 小僧も何か関係あるんか?」

「違うの。 小狼くんは、今日が日曜日だって教えてくれただけ。 教えてくれなかったら、今頃学校に行ってるわ。」 と、 さくらは答えた。 自分の服装を見て、「あたし着替えてくる。 二人とも仲良くしてるのよ。 お願いだから。 二・三分で戻ってくるから。」 さくらは寝室のドアを開けて、二人の目の前からいなくなった。

「二・三時間じゃないのか。」 と、小狼とケロは同時につぶやいた。 二人はお互いに詰め寄ってケンカしようとしたが、さくらのために おとなしくしていた。

二人の予想に反して、さくらは約束どおり、数分で着替えを済ませて戻ってきた。 急に冬が近づいてきているので、肌寒くなってきていた。 さくらは寒くないように、小狼より先に、パープルのタートルネックと 黒いジーンズを履いて出てきた。 普通の人ならば、服装はベーシックとか プレインになるだろうが、さくらの場合は、腰をピッタリと締めるジーンズが、 長年チアリーディングで鍛えたすらっとした長い脚を強調している。 また、そのパープルのタートルネックもきつめなので、暖かいだけでなく、 ほっそりとしたさくらのウエストを際立たせていた。 さくらは、そのカールした 髪の毛をハイ・ポニーテールのままにしておいたが、タートルネックと 合わせるために、群青色のリボンをパープルに変えた。

そんな天使のような姿を見た小狼は、驚いてしまったが、 言葉だけは発することができた。 「大道寺のデザインか?」

「うん。 どうかなぁ?」 と言って、優雅にまわり、ドア枠にぶつかって 動きを止めた。

「うまい。」 と、小声で小狼は言ったので、ケロにしか聞こえていなかった。

「なんか言った?」

「えっと、なんだっけ。 その...」 と、小狼は途中で言葉をやめた。 二人の魔法使いの間に奇妙な気配を感じた。 二人が感じているのは、 7年前に 「無」 のカードを捕まえた時に消えた気配だった。

「小狼くん...」

「ああ。 俺も感じた。 でも、もう起こるはずはないんだが。」 と、 ケロを見て重々しく言った。 「絶対に、もうクロウカードはないんだよな?」

「クロウはいろんな意味で変わった奴やったからな。 守護者に黙って カードを創っとったかもしれん。 ユエはわいよりクロウとおった期間が 長かったっんや。 わいは、クロウが死ぬ前、まだ生きとるうちから クロウカードの本に封印されとったんや。」

「じゃ、ユエはこの気配が何かわかるのか?」

「せや。」

「さくら、あの人の電話番号はわかるか?」

小狼がさくらを見ると、さくらは小狼とケロの会話に気づいていない表情 をしていた。 エメラルド色の瞳はうつろで、体は硬直し、何かを 待っているかのようにも見えた。 その状態は、その朝早く見たことを 小狼は思いだし、忘れていた恐れがぶり返した。 小狼は、再び、 さくらの名前を呼んだ。

「さくら。 さくら。 さくら。 さくら。 返事してくれ!」 小狼は 取り乱したように、さくらのもとに駆け寄り、さくらの目の前で 手を振ってみた。 さくらから返事がない。 小狼は諦めずに、 さくらの名前を何度も何度も呼び続けた。

*~*~*~* さくらの潜在意識 *~*~*~*

ここはどこ? どうしてこんなところに来ちゃったんだろう? さくらは明かりのない真っ暗な部屋の中に立っていた。 さくらは壁にあたり、 その壁に手をおいたまま、円形の部屋のまわりを歩き始めた。 時間が経つごとに、 感じたことのない感覚が彼女を支配する。 あたかも、自分が他人の感情の 船に乗っているような感覚だった。

「この辺にいるはず。 見つけだして、ミッションを完了させなければ。」 と、その声に含まれる敵意は、さくらには察知できた。

突然、さくらは誰かが自分の名前を呼んでいることに気づいた。 よく知っているこれだけど、誰? ケロちゃん? 知世ちゃん? ちがう、男の子の声だ。 お兄ちゃん? いえ、もっと身近な人。 あたしを引き戻そうとしてる。

「小狼くん。」 と、さくらは声に出した。 その直後、自分の体が 明るい方向に引っ張られるのを感じ、ある線を通過すると、現実世界のさくらは 崩れ落ちた。 ゆっくりと、彼女は意識を取り戻した。 目を開ける前、さくらは安堵感を感じた。 力強い腕に体を支えられ、 呼吸が安定して落ち着いた。 さくらは瞬きをして、目を開いた。

エメラルド色の瞳を確認して、小狼は安堵のため息をついた。 「さくら、びっくりしたで。」 と、ケロは言った。

「ごめん。 そんなつもりはなかったけど。」 と、眠そうにさくらは答えた。

「そのとおりだ。 なんだとしても、おまえのせいじゃない。 おまえのせいじゃ...」 小狼は言った。

真っ暗な部屋の記憶がさくらに戻ってきた。 さくらはサッと立ち上がり、 「知ってるって。 あたしたちが感じたなにかが、あたしたちの 場所を知ってるって。 それに見つかるのは時間の問題だわ。 自分たちの身は自分で守らなきゃ。 その力は、なにかの理由で、 あたしたちを恨んでる。 ミッションがどうとか言ってた。 そんなことがあるみたいだけど、注意しないと。」

さくらは鍵をとりだした。 鍵を手のひらに押して見つめ、神経を集中させると、 さくらに、いつもの幸せそうな顔が戻ってきた。 呪文を唱えることなしに、 鍵は本来のサイズの星の杖に変化した。 さくらはテーブルからカードを取ると、 ケロの方を向いた。 ケロはうなずいて、エネルギーを集中させた。 明るい光りに包まれ、光がおさまると、ケロのいた場所には ケルベロスが立っていた。 さくらは 小狼を見ると、「早くして。 早く、剣を構えるの。」 と言った。

うなずいて、小狼は首飾りに手をのばしたが、首にさげていないことに気づいた。 「クソ。」 と、汚い言葉を漏らす。 「部屋に置いたままだ。 すぐ戻る。」 キッチンを出て、ろうかを走り、自分の部屋に向かった。 その途中で、 さくらに格闘技を少しだけ教えてから、さくらはすごく上達したと考えていた。 まともに教えたのは、小狼が呪文なしで首飾りを剣に変えられるのはどうしてかと、 さくらに訊かれたのが最初だった。 それを説明すると、さくらも一生懸命 学ぼうとした。 格闘技を学び、基本的な技と、実力を向上させたくて 教えてもらった技をさくらが習得するには、そんなに長くはかからなかった。 さくらを危険から守るために、常にさくらのそばにいる必要はないと、 小狼は納得していたが、さくらが防御法まで習得していれば、 本当にそばにいなくてもいいと思った。

それで、練習を始めたが、毎朝5時に二人は起きて、組み手をして練習した。 最初の数ヶ月は、楽に小狼が勝てたが、さくらは本気で簡単に諦めなかった。 さくらは練習に励み、最後には小狼を本気にさせるようになった。 まだ小狼が勝つものの、最初ほど簡単にはいかなくなった。 実は、 その一週間の間、小狼はさくらを突きはなしていた。 さくらは、あまりに 練習にがんばりすぎて、休息が必要だったが、そんなことは 恥ずかしくて言えなかったからだ。

小狼は、ドアを開けて、きれいに片づいた自分の部屋に入っても、 まだ考え事をしていた。 彼はすばやく、カエデ材の机に置かれた、 美しい彫刻が彫られた木箱に向かった。 その箱には、普段見ることのない いくつも魔法の記号が彫られていたが、そのほとんどの意味は小狼には わからなかった。 そうはいっても、その箱が選ばれし者から選ばれし者へ 継承されたもので、中に入っている者を邪悪な者から守っていることは、 小狼は知っていた。 普通なら、その箱を開けると大切な武器が入っていると、 その戦士は思ったのだが、鍵を開けた箱には何も入っていなかった。 その箱に掛けられた魔法は非常に強力で、たいていの実力のある魔導師で さえもその魔法を解くことができない。 だから、小狼は、 「その箱の持ち主と許された者しか触ることができないというのに、 だれが封印を解いてしまったんだ?」 と、強く考え込んだ。

その青年魔導師の心にパニックが襲ってきたが、それは自分の心の動きでは なかった。 パニックは別の人物、さくらの心だった。 ここで一つわかった。 二人の間に魔力をとおして交信できるシステムが確立したのだと。 無力なさくらが発する次の感情の山を感じたため、小狼は、自分の考えや、 さくらと自分にリンクかできたことに対する疑問点について、あまり 立ち入らないことにした。 何が起きているのか、小狼はすぐに理解した。 「クソォ! 戦いが始まりやがった!」

その小さな狼は、自分たちを狙う力と戦っている小さな花を助けるために、 部屋を飛び出した。 その半ばで、女性の悲鳴が静けさをうち破る。 「さくらぁ!」 スピードを上げ、男性カードキャプターは戦場に 突進した。

*~*~* その頃、居間では *~*~*

「ケロちゃん。 覚悟しといて。 このカードが魔力か、なんかしらないけど、 強くて恐ろしい。 この力の大きさはまったくわからないけど、 まだ遠くにいた時から、力を感じてたから、これは大変な戦いになりそうだよ。」

「さくら。 わいは、この数ヶ月でさくらの力がごっつぅ大きなったのには 驚いとるんや。 さくらは小僧に比べたら、むちゃ優れたカードキャプターや。 さくらが、あの黒い力に集中することができれば、思いや感情がごっつ高度な 魔力を発揮するで。」

「そんなこと言わないで。 小狼くんがいなければ、あたしはとっくに死んでるわ。 小狼くんはいろんなことを教えてくれて、何度もあたしを助けてくれた。 言うまでもないけど、戦う方法だってちゃんと教えてくれたし、 呪文なしで鍵を変える方法だって。 あたしは小狼くんには及ばない。 ちょっと、なに? ケロちゃん、ガードして! 来た!」

遠くに、青い空と葉が落ちた木に対するように黒い影が見えた。 急激に近づいて、かなりの距離も一瞬で移動している。 さくらの感覚は 圧倒されてしまったが、なにかのカードのようだった。

考えている間もなく、そのカードは金網入り窓ガラスに向かってきた。 止まることもなく、カードはガラスを通り抜け、カードのすぐそばには 形のない黒い霧が立ちこめていた。

「ユーレイ。」 とさくらはつぶやいたが、3歳の時に桃矢から聞いた幽霊話で 感じた恐怖はおさまっていた。 しかしながら、さくらは感情を外に出さず、 その他所に残った。

「あなた、カードね。 どのカードなの? もしかして... 幽 (ゴースト)、汝のあるべき姿に戻れ! 違う。 霊 (ファントム)、 汝のあるべき...」 彼女の期待していた効果は現れなかった。 「恐怖さえ感じなければ... そうか! 恐 (フィア)、汝のあるべき姿に戻れ!」

その言葉で、フィアのカードは青白く輝き始めた。 しかし、その光が おさまると、ケロとさくらの好奇心あふれる目の前には、 ぞっとするような恐ろしい姿が現れた。

フィアの頭には黒い布が被さっており、頭の部分だけが見えないように なって、本当の顔はその陰に隠れていた。 カードは前方に浮かんできた。 突然動いたので、布は落ちて、フィアの顔が見えた。 実に、フィアの実体が かなり恐ろしいので、さくらはギュッと手を口に当て、叫び声を押し殺した。 多くのカードが普通の顔をしているのとは違い、このカードは真珠の頭蓋骨をして、 白い牙が口の横の骨から飛び出ていた。 目のない眼孔には、毛の生えた蜘蛛が 動いていたが、フィアはそれには気づいていないようだった。 そのおぞましい 外見をさらに醜悪にするように、頭蓋骨には腐った肉がぶら下がっており、 そのカードが死んでいた状態からよみがえったかと思わせられる。 ほとんどの カードが否定できないくらいはっきりした形をもっていたのに対し、 マントの部分はぼやけて、その場所に焦点を合わせることさえできなかった。 さくらがそのことにもっと早く気づいていれば、大きな疑問は解けていたかも しれないが、その気味の悪い部分に焦点を合わせることを さくら自身が拒んでいた。

目につく部分は別にしても、フィアは多くの武器を装備していた。 さくらとケロにわからないように、そのカードは毒を塗った矢を 何本も仕込んだクロスボウをもっていた。 背中にあるよくわからない 部分に仕掛けられている特別な魔力も、大きな武器であった。

さくらは、もはやカードを見てられなくなっていた。 さくらは後ずさりして隅に あたり、青白い壁にもたれてしゃがみ込んだ。 思っていた以上に強く、 フローリングに激突し、さくらは悲鳴を上げた。 胸の鼓動を感じながら、 さくらは脚を胸元に引き寄せ、それを腕で抱え込み、柔らかいパープルの タートルネックに顔をうずめた。 恐ろしい外見の敵を目の前にして、 さくらは大きな恐怖に直面していることがケロにはわかった。 ケロも志気を高め、食べた朝食を戻さないようにするのは大変だった。 そのどちらも一か八かで叶えるため、ケロは大きな口から強力な 火の玉を吐き出した。

ケロの攻撃は的の中央に命中した。 しかし、煙が晴れると、カードは 無傷で現れ、激怒している。 報復として、カードは口を開いて腐りかけた 歯や他のものを見せた。 普通 舌があると思われる場所にはヘビがいた。 その爬虫類は、目を覚まして、ガーネット色の目で冷酷にケロを見つめた。 ケロは、突然知った意外な事実に後ずさりした。 その脊椎のない生物は ケロの驚きに便乗し、カードの口から床に滑り降りた。 ケロは正気を 取り戻し、そのヘビを威嚇し、鼻息を荒くし、目を細めた。 その冷血動物は、少しも怖じ気づいた様子がない。 逃げ出す代わりに、 そのヘビは口を開いて、飛びかかって攻撃してきた。

ケロに反撃することはできなかった。 数秒で、そのヘビは最初の倍の長さになり、 ケロに巻き付き、胸を強く締め付けた。 そのうなり声を聞き、さくらは かろうじて顔を上げ、愛すべき守護者が窒息寸前まで締め付けられているのを見た。 ケロは酸素不足の状態でできる限り戦っていたが、もがけばもがくほど、 その爬虫類の締め付けは力を増す。 その直後、ヘビはケルベロスを部屋の反対側に 投げ飛ばし、向かいの壁手ぶち当てた。 その衝撃でケルベロスはケロに戻り、 テーブルに落ちた。 さくらは、友達が自分のために苦しんでいるのを見て 足がすくんでしまった。しかし、ケロのそばに飛んでいって大丈夫だからと 言ってあげたいと思うほどに、さくらは動けると自分に言い 聞かせることはできなかった。 そのカードを恐れるあまり、さくらはその場から まったく動けなくなっていた。 そんなふうになるのは馬鹿げてるし、 後で小狼にバカにされるとわかっているが、幽霊に対する恐怖がそれを 勝っていた。 力になってくれる小狼とケロがいないカードの主は、 どうしようもなく無力であった。 そう考えると、さくらは泣きだししまった。

フィアは自分のヘビがした仕事に満足しているように見えた。 ヘビを呼び戻してゆっくりと撫でてやると、ヘビはあごの中に消えた。 カードは右の方から弱々しい鳴き声を聞いた。 それが何か目を向けると、 さくらが目に入った。 カードは任務に戻った。 背後に隠し持っていた クロスボウを取り出して、さくらの心臓を狙って弓を引いた。 その動作を音で聴き、女性カードキャプターは顔を上げ、何が起きて いるのかを認識したが、反撃するには既に遅すぎた。 せいぜいできたことは、 矢が放たれる瞬間に立ち上がることくらいであった。

血も凍るような悲鳴が雲明マンション(注) に響いた。

訳者注> 原文では Unmei Apartment となっており、おそらく、 作者は 「運命」 という単語を想定されたと思いますが、あまりに ストレートすぎる単語なので、ワザと違う漢字をあてました。


はい... こんな崖にぶら下がった状態で終わってごめんなさい。 でも、それを書くにはすごく時間がかかったんです。 もし、前のバージョンの第1章を知ってる人がいたら、今回はかなり長く、 そして、話が細かくなっていると気づいてもらえるでしょう。 で、崖にぶら下げでごめんなさい... でも、殺しに来ないで! そんなことしたら、続きが読めなくなりますよ...

-Sakura Sama Blossom

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