太古の娘

作者: deko

エピローグ

ある晩、窓の外ではサイレンが鳴って、消防車が走り回っている。 とある マンションから出火しているらしいが、ここにも、災難を抱えている人が いた。 机に高く積まれた宿題に奮闘をしているのは、 この部屋の主人。 傍らでは、知のカードが浮遊しているが、さくらには 何の援助もしない。

ケロ: 「せっかく知のカードが手に入っても、 何の助けにもならんかったなあ。」
知: 「勉学というものは、学びにおいて形成されるものです。 人の助けは無用です。」
さくら: 「うるさい! 静かにしないと封印するわよ。」

ドアにノックがして知世が入ってくる。

知世: 「まあ! やっぱり、お兄さんが言っていたように...」

知世は友の姿を見て沈黙する。

さくら: 「やったーっ! あとは日記帳だけ。 あ、いらっしゃい、知世ちゃん。」
知世: 「大変な夏休みでしたわね。 ホープちゃんもいなくなって。 あの、外祖さんは?」
ケロ: 「李家のお母はんが、あの夜に来ておったんやなあ。 すぐ捕まって 今は香港や。」
さくら: 「ホープちゃんから何か連絡あった?」
知世: 「はい、電子メールで、歌帆先生が言うには 「早くも、スッピーと ドンパチ始めた」 ですって。 でも、本当は...」
ケロ: 「証拠隠滅。 あの遺跡地図と、あいつの足跡を見た時の桃矢兄ちゃんの顔、 傑作やったで。」
さくら: 「嘘よ、嘘。 エリオルくんが属性を替えられるかもしれないと いうので、しばらく預けることになったの。」
知世: 「外祖さんのカードさんを、みんな引き取ったとか、 これで59枚になりましたわね。」
さくら: 「うん。小狼君がそうしろって。 あら! 知世ちゃん。 小狼君 知らない? さっきまでいたのに。」
そこへ、携帯電話の着信する。 さくらは電話に出る。


翌朝、夏休みの宿題を満載した紙袋を引きずって、 玄関からさくらが走ってくる。 そこへ、隣家の人が挨拶。

偉望: 「おはようございます、さくら様。 小狼様! さくら様が通学でございます。」
小狼: 「おはよう! 宿題終わったんだな。」

さくらは目を丸くしている。 信じられないものを見たので、 ビックリしているらしい。

偉望: 「昨夜は大変でございました。 アパートの方は下の階の ボヤですみましたが、リフォームまでの間どうしようかと 思い悩んでいたところ、大道寺様がいらして。」
さくら: 「徹夜で引っ越ししたの?!」

隣家に小狼が引っ越してきたことによる嬉しさよりも先に、 さくらは驚きを感じていた。

知世と、さくら,小狼が歩いていると、交差点で急ブレーキの音が響き渡る。 彼らの目の前にいる可愛い女の子が明らかに信号を無視している。

さくら: 「危ない!」

瞬間、彼女は 「ウインディ」 のカードを召還した。 その時、信じられないことが 立て続けに起こった。 少女は、迫り来る車ではなく、さくらの方を見て 笑った。 そして掌をかざすと目も眩む光が放射された。

少女: 素敵よ、ママ。 でも、おっちょこちょいね。相変わらず。

ウインディのカードは召還を解除されて、さくらの掌に残った。 それなのに、 通学路に居合わせた人は何も覚えていなかった。 車の運転手も、 それは同じだった。

さくら: 「李君、今のは、今の女の子は?」

だが、小狼にも、知世にも女の子の記憶はなかった。


考古学教室で、桃矢が発掘品の修復をしている。 甕棺の一部らしく、 美しい文様があちこちに残っている。 そこへ、中川容子が入ってくる。 今の彼女は若い女性の持つ清々しい香りを放っていた。

容子: 「その棺に花が手向けてあったって、本当?」
桃矢: 「ああ、綺麗な花が多かったな。 どんな花か知りたいの?」
容子: 「ううん。きっと、ここで眠っていた人って、みんなに愛されたんだなあ と思ったのよ。」
桃矢: 「身は風に運ばれようとも、ここに宿りし想いは...」
容子: 「永遠。」

桃矢はため息をついて、エプロンを脱ぎ捨てて上着を取った。

桃矢: 「容子、飲みにいかねえか。」
容子: 「月城君と行くんじゃないの?」
桃矢: 「先客があるのか? なら、やつと行くけど。」

彼女は心の中で、喝采を叫んだ。 こうでなくちゃ! と。

容子: 「行く! 言っておくけど、私、日本酒で鍛えているのよ。」
桃矢: 「お手並み拝見。」


終業時間が過ぎ、天宮総業の会長室で真嬉老人が夕陽を浴びながら、 詩集を読んでいた。

真嬉: 「『すべてこの世はことも無し。』 すべては、主の御心のみ... か。」

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