はじめに

このカードキャプターさくらは原作およびアニメを基本にキャラクターを 展開しております。 ですが、決して、CLAMP の皆様の著作権を 侵害するものではありません。 このストーリーは同好の士が集まった、 WEB サイトにおいて誕生したものであります。 当然、WEB サイト内部でしか 発表することがないという前提で構成されています。 最初から キャラクターの創造に関わる膨大なエネルギーを、その苦悩を この作者は経験しておりません。 ですが、理解はしているつもりです。 また、 このような世界に関心をお持ちの皆様でも、権利の侵害に関しての常識は ご存じであると思います。 ですから、このようなストーリーに関心を 持っていただき、違和感、思い違いに気付かれても 原作著作権者の CLAMP の皆様には、何の関係もないということを ここに理解していただきます。

献辞

すてきな WEB サイトの管理者である Yuki Neco さんへ。 TV アニメーションの 編集を担当なさった尾形治敏様の御霊に。 そして、 世界中にいらっしゃる Sakura ファンの皆様に。

作者 deko

登場人物 紹介

木之本 さくら本編の主人公。 中学2年生の魔法少女。
李 小狼さくらの恋人。 中国魔術を扱う少年。
大道寺 知世さくらの無二の親友。
木之本 藤隆さくらの父。考古学教授
木之本 桃矢さくらの兄。大学生
月城 雪兎桃矢の親友で、ユエの仮の姿。
中川 容子桃矢のキャンパスメイト。
クロウ・リード故人。 さくらに全てを託した史上最高の魔術師
ケルベロスさくらカードの守護者「封印の獣」
ユエさくらカードの守護者「審判者」
柊沢 エリオルクロウの生まれ変わりで、大人の風貌をもつ。
スピネル・サンエリオルの守護者
ルビー・ムーンエリオルの守護者
観月 歌帆エリオルの連れ合い
さくらカードクロウが創造した魔法のカードが、 さくらの後継により再創造された。 全部で53枚のカードがあり、 一時在った「心」のカードはさくら自身が小狼への想いを実感したときに 生まれた。 その後、「負の属性」 を持った 「無」 を封印する ときに 「心」 が 「無」 と融合して 「希望」 となった。 「希望」は 孤独の世界にいた 「無」 に 「心」 が結びつき、生きる力を 体現する。 さくらと小狼の守護カードだが、茶目っ気の多い女の子でもある。
壱 予 (イヨ)弥生時代のクニ「邪国」の巫女。
大 勇 (ダイ)壱予の護衛戦士で幼なじみ
麗 呼 (レコ)壱予の叔母。女王にして神職「神の妻」
李 外祖 (ゲソ)20世紀初頭の李家の一員。
狗 奈 (クナ)邪国を滅ぼそうとする狗国の王

太古の娘

作者: deko

プロローグ

煌めく輝きの中に在る都市 「香港」

高級住宅街の中に、一軒だけ闇に包まれた豪邸がある。 庭先に着き出した 八角形の踊り場。 四方に陣取った若い女性たちが跪き、苦しい表情で、 呪文を唱えている。 中央には中年の女性が、少年とともに向かい 合って同じように呪文を唱えている。 と、踊り場の中央から巨大な光輝が 吹き出す。 吹き出した光輝は天空に飛び出し、消え去る。 側に いる老人。 偉望 「小狼様」 気遣うように見守る姿。 次の瞬間、天空から 先ほどの光輝が舞い戻ってくる。 中央の小狼と夜蘭に直撃。 周囲の娘たちが 悲鳴を上げて、倒れる。 夜蘭も膝を崩すが、小狼はかろうじて 立ち続けていた。

夜蘭 「見事ですよ。 小狼」 だが、夜蘭の賞賛とは裏腹に残念そうな表情の小狼。
小狼 「申し訳ありません、母上。外祖は見つかりませんでした。」
夜蘭 「そうですか。 ならば、最も強い方の力を借りねばなりませんね」
小狼、母から離れ、沖の方へ歩き出す。瞳に映る少女のこと。 「さくら」
娘たち 「やったーー。小狼ちゃん。彼女のところへ行けるのよ」
真っ赤になって姉たちに小突かれる。四人の魔女に取り巻かれて青色吐息。
夜蘭 「偉望。 出発の用意は出来ましたね」
偉望 「はい、奥様」 実に礼儀正しい姿。
夜蘭 「小狼。これよりそなた自身が李家です。」
小狼 「!」 跪き、平伏する姿は主君に対峙する臣下のよう。
夜蘭 「これから、そなたには家は在りません。 そなたが望んだところが、 そなたの家なのです」
精一杯立ちつくしている小狼。 独り立ちの時がやってきた。
姉 「いいこと、小狼ちゃん。彼女にはソフトよ」 「あーら、お姉様。 小狼ちゃんの奥手じゃ百年はかかりますわ」 「大丈夫よ。さくらちゃんなら」 「相思相愛なんだから」
娘たちの喧噪にかまわず、夜蘭が来る。最愛の息子を抱きしめる
夜蘭 「一緒になって、子が出来たら。 見せに来ておくれ」
未練を振り払うように屋敷の方へ歩み去る。 つづく娘たち。
そのまま、母と姉たちの後ろ姿を見送る小狼。傍らに残るのは偉望のみ。
偉望 「お供いたします。 小狼様」

古代日本

暗い。時折、雷の音が轟き渡る。

「いたぞーー!」 「逃がすな!」 甲冑をまとった兵士たちが、 松明を掲げて走り回っている。 やがて勢子たちは丸い円陣を作り、 その中心に若い男女を取り囲む。

隊長 「お探ししましたぞ。壱予様」
壱予 「いやです!私は戻りません。叔母様。否、女王様にお伝えください。」
隊長 「出来ませんな、おい!!」

屈強な体格の兵士が、進み出て壱予の手を掴む。あらがう壱予。

壱予 「大勇!」 傍らの男の子に助けを求めるが、すでに彼は多くの兵隊と 切り結んでいた。

切られる大勇。足下に崩れ、倒れる。

壱予 「大勇!!」 兵士の手を振り払い、瀕死の彼のところに駆け寄る。 血に 染まった大勇の顔。すでに、彼は何も見えない。 隊長が二人の間に 立ちふさがり、壱予の顔に平手を浴びせる。 倒れ込む壱予。 途端に 激しい豪雨が襲ってくる。
隊長 「なぜ、私にこのようなことをさせるのですか!壱予様。」

怒りと悲しみに染まった壱予には聞こえない。と、 壱予の前に幸せな少女 (さくら) の微笑みが浮かび上がる。 柔らかな 日差しの中にいるさくらは、なんの屈託もない。 はっとなる壱予。 現実は、 豪雨。 そして、大勇の死体。

壱予 「おまえになんか、おまえになんか」 怒りに我を忘れた 女がいる。 そんな彼らを、遠くから見ている痩せた男。 木の枝に乗り、 背景には小さな魔法陣が輝いている。
外祖 「いいぞーー。その調子ですよ、壱予女王様」

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